魚から入る水銀を、種類と量で管理する
日本人が摂っている水銀の88.1%は魚介類から入っています2。そして厚生労働省は、魚種ごとに「1回約80gとして週に何回まで」という目安を出しています1。
対象は妊婦です。小児と一般の方は含まれていません。
そして目安に挙がっているのは、ふだんの食卓にあまり出てこない魚のほうです。キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ。ふだんよく食べるマグロは、ほとんどが目安の外にあります1。
入口が1つに寄っている、めずらしい物質
厚生労働省は毎年、水銀の一日摂取量調査を行っています。市場で売られている食品を買い、ふつうに調理してから測る方式です。
1999年から2008年の結果では、魚介類から88.1%(7.18µg/日)、それ以外の食品から11.9%(0.99µg/日)でした2。
この偏りは、検査に並ぶ9つの金属のなかでは例外的です。ニッケルやアルミニウムのように入口が何本もある金属と違い、水銀は9割近くが1つの入口から入っています。
入口が1つなら、変える対象も1つで済みます。
目安は、魚種ごとにgで決まっている
薬事・食品衛生審議会が出している注意事項に、魚種と量の対応表があります1。1回を約80gとして、何回までかが書かれています。
| 目安 | 1週間あたり | 魚介類 |
|---|---|---|
| 週に2回まで | 160g程度 | キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツ |
| 週に1回まで | 80g程度 | キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ(メバチマグロ)、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ |
| 2週間に1回まで | 40g程度 | コビレゴンドウ |
| 2ヶ月に1回まで | 10g程度 | バンドウイルカ |

そして表に載っていない側も明記されています。マグロのうちキハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、ツナ缶は「通常の摂食で差し支えありません」1。ツナ缶が名指しで外されているのは、ふだんの量を考えるうえで効きます。
「1回80g」が、実際にどれくらいか
gで言われても手が止まります。注意事項は、そこも数字で書いています1。
| 形 | 重量 |
|---|---|
| 寿司、刺身 一貫または一切れ | 15g程度 |
| 刺身 一人前 | 80g程度 |
| 切り身 一切れ | 80g程度 |
つまり「週に1回まで」は、キンメダイの切り身1切れ、またはメカジキの刺身1人前にあたります。寿司なら5〜6貫です。
同じ週に2種類食べるときは、割る
表は魚種ごとに書かれていますが、組み合わせたときの決まりも書かれています1。
| 組み合わせ | 量の扱い |
|---|---|
| 「週に1回」の魚を2種類 | それぞれ2分の1 |
| 「週に1回」の魚を3種類 | それぞれ3分の1 |
| 「週に1回」と「週に2回」を1種類ずつ | それぞれ2分の1 |
食べ過ぎた週があった場合についても書かれています。「ある週に食べ過ぎた場合は次の週に量を減らしましょう」1。1週間で完結させる決まりではありません。
対象は妊婦。小児が外れている理由
この注意事項の対象は妊婦と、妊娠している可能性のある方です。目的は胎児の保護と書かれています1。
小児が対象外である理由も、Q&Aに書かれています。「小児は成人と同様の水銀の排泄機能を有しており、脳への作用も成人と類似している」こと、そして「セイシェル小児発達研究」で子供の神経系の発達にメチル水銀に関連する有害影響が証明されなかったこと2。
一般の方についても同じです。「通常食べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません」1。
平均は、耐容量の57%
数字で位置を確かめられます。食品安全委員会が定めた妊婦の耐容量は2.0µg/kg体重/週。体重50kgなら週100µg、1日あたり14.3µgです2。
これに対して、平均的な1日の水銀摂取量は8.2µg。比にすると57%です2。
注意事項の本文にも同じことが書かれています。「本注意事項は、妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません」1。魚を減らす方向の文書ではありません。
むしろ逆の記述もあります。「魚介類を全く食べない集団では、高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されています」1。
変えたら、2ヶ月で見る
入口を変えたあと、どれくらいで体内の量が動くかも書かれています。「体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月」2。
カドミウムが腎皮質で20〜50年かかるのと比べると、水銀は短いほうです。今週食べる魚を選べば、2ヶ月後には減っている側の量になります。
やることは1つです。上の表に自分がよく食べる魚が載っているかを確かめる。載っていなければ、この注意事項で変えるものはありません。載っていたら、1回80gの回数を数えるだけです。
魚以外の入口については、入ってくるものと、出す力に一覧で並べています。
参考文献・参考資料
- 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」平成17年11月2日(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf
- 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項のQ&A」平成22年6月1日改訂(問5・問13・問18・問19) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-b.pdf
本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。
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