「溜まっている」より先に、これから入る量を見る
「溜まる」と言うとき、どこに溜まるかで、出ていく速さが100倍以上変わります。
水銀は、体内の量が半分になるまで約2ヶ月1。カドミウムは、腎皮質での生物学的半減期が20〜50年と推定されています2。
違いは、金属の毒性ではありません。体のどこに置かれるかです。
同じ「蓄積」でも、時間の桁が違う
検査の蓄積の欄には9つの金属が並びますが、この欄の中で、時間の性質がまったく違うものが混ざっています。

カドミウムについて、資料はさらにこう書いています。「脳、脂肪組織、骨への蓄積は、非常に少ない」2。行き先が、かなりはっきり決まっています。
腎臓の「回収する」働きが、逆に出る
カドミウムが腎皮質に留まる理由が、資料に書かれています。
(カドミウムは)近位尿細管で再吸収されて腎皮質に蓄積。非常に微量のカドミウムが尿から少しづつ排泄される2
腎臓は1日に200リットルを濾過して、そのほとんどを回収しています。尿として出ていくのは1%未満。この「回収する」働きが、カドミウムでは留まる方向に働きます。
そしてカドミウムの耐容週間摂取量は、その腎皮質への影響を指標に設定されています。溜まる場所と、影響が出る場所が同じです。
年齢で、数字が変わる
この分野には、年齢によって値が変わるものがいくつかあります。
鉛の吸収率が成人の5倍というのは、大きな差です。同じ量が口に入っても、体に入る量が5倍違うということになります。
一方でカドミウムについては、「胎盤をほとんど通過しないため、胎児や新生児の負荷量は無視できる」とされています2。物質ごとに、話が違います。
入口によっても、入る量が違う
もう1つ、経路ごとの差があります。
| 経路 | 分かっていること |
|---|---|
| 経口 | 鉛は成人で約10%、小児で50%が吸収される3。ニッケルは1〜10%で、90〜99%は便として通過 |
| 経皮 | 鉛の経皮吸収はほとんどない3。酸化チタンも角層の外層より奥へは行かない |
| 吸入 | 肝臓の作り変えを経由せず、直接全身へ |
「体に入ってくる」は、経路と物質の組み合わせで、まったく違う話になります。
だから、入口を閉じたときの効き方も違う
ここが、この記事の実用的な結論です。
入口を1つ選んで閉じるという手順は同じでも、結果が見えるまでの時間が物質によって違います。
| 物質 | 起きること |
|---|---|
| 水銀 | 2ヶ月で、体内の量が半分に近づきます。厚労省が、妊娠に気づいた段階から摂取量をコントロールすることで「一定の効果が期待される」としているのはこのためです1 |
| 鉛 | 血液の側は1ヶ月ほどで動きますが、骨に移った分は、その速さでは動きません |
| カドミウム | すでに溜まった分は、減るのを待てる時間ではありません。効くのは、これから入る量のほうです |
つまり「デトックス」で減らせるかどうか以前に、物質ごとに減る速さが決まっています。
汗については、尿に匹敵する排泄が報告されている一方で、測り方が確立していません。食べもので排泄が動いた人の試験もありますが、測っているのは尿に出た量です。どちらも、この半減期の枠組みの中で意味を持ちます。
「溜まっている」より、「これから入る量」
結果に蓄積の欄があると、視線はすでに溜まっている量に向きます。
ただ、ここまで見たとおり、すでに溜まった分に対してできることは、物質によってかなり限られています。カドミウムの20〜50年という数字は、そういう意味です。
対して、これから入る量は、今日から変えられます。
調理で9割減らせるものがあります。本数で数えられる入口があります。最初の数分を流すだけで変わるものがあります。鏡で見れば分かる入口があります。
時間の向きが違います。溜まった分は過去の結果で、入る量はこれからの選択です。
参考文献・参考資料
- 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」Q&A(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-b.pdf
- 内閣府食品安全委員会「食品から摂取されるカドミウムの健康影響評価」(2008年7月3日)。ヒトにおけるカドミウムの動態 https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-iinkai240-cadmium.pdf
- 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会「鉛の毒性に関する知見について」資料12(平成18年6月13日) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-7l.pdf
本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・食事法・施術の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。記載した半減期は推定値であり、条件によって異なります。
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