睡眠の質を上げるために、まず確かめる2つ
身体が必要とする時間以上に床の上で長く過ごすと、眠りの質は下がります。寝つきが悪くなり、途中で目が覚め、熟眠感が減る。厚生労働省の睡眠ガイドにそう書かれています1。
「明日は大事な日だから早く寝よう」は、逆に働きます。
そして、その「質」が何を指すのかも定義されています。睡眠休養感、つまり「睡眠で休養がとれている」という感覚です。
装置で測る数値ではありません。朝、目が覚めたときの自分の感覚のほうです。
成人への推奨は、3つだけ
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が、成人に向けて挙げているのは次の3つです1。
| 内容 | |
|---|---|
| 量 | 適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する |
| 質 | 食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める |
| 不調のとき | 生活習慣等の改善が重要だが、病気が潜んでいる可能性にも留意する |
3つしかありません。そして「◯◯を摂る」「◯◯を使う」といった項目は、ひとつも入っていません。
長く寝ようとすると、質は下がる
ここが、いちばん実用的で、いちばん知られていない部分です。
ガイドはこう書いています。身体が必要とする睡眠時間以上に眠ろうとして床の上で長く過ごすと、「寝つくまでに長く時間がかかる」「途中で目が覚める時間(回数)が増える」「熟眠感が減る」など、眠りの質が低下する1。
つまり、「明日は大事な日だから早く寝よう」は、逆に働きます。眠くないのに床に入る時間を増やすと、寝つきが悪くなり、途中で目が覚め、朝の休養感が落ちる。
質を上げたいときにまず見るのは、床にいる時間を延ばしていないかのほうかもしれません。
必要な時間は、年齢と季節で変わる
「7時間寝ればいい」という数字も、一律ではありません。脳波で実際に測った研究では、年齢とともに、実際に眠れる時間が短くなります1。

季節でも動きます。冬は夏に比べて10〜40分ほど長くなることが示されています1。
そして個人差があります。ガイド自身が、こう注意しています。10時間を超える長い睡眠を必要とする人の場合、ガイドに沿って睡眠時間を8時間に短くすることは、かえって睡眠不足を招く可能性がある1。
だから「指針」ではなく「ガイド」になった
この文書は、2014年版までは「睡眠指針」という名前でした。2023年版で「睡眠ガイド」に変わっています。
報告書は、その理由を書いています。「指針」という表現が、全ての国民が等しく取り組むべき事項であるという誤解を与える可能性等を考慮した1。
名前を変えてまで、全員が同じことをする話ではないと伝えようとしています。「睡眠の質を上げる10の方法」のような一律のリストとは、立っている場所が違います。
日本の現状
参考までに、いまの日本の数字です。20〜59歳では、睡眠時間が6時間未満の人が約35〜50%を占めます1。
そして「睡眠による休養を十分とれていない者の割合」は、平成21年の18.4%から平成30年の21.7%へ増加しました。国の評価は「D(悪化している)」です1。とくに50歳代で増え方が大きくなっていました。
量が足りていない人が半分近くいて、休養感のほうは10年で悪化した。質の前に、量が確保できていないという順番が見えてきます。
時間は足りているのに、休養感が低いとき
ここは分けて考える必要があります。
ガイドは、睡眠時間を十分確保しているにもかかわらず睡眠休養感が低下した場合、医療機関などで原因を詳しく調べてもらう必要があるとしています1。
閉塞性睡眠時無呼吸のような睡眠障害が隠れていると、睡眠環境や生活習慣、嗜好品のとり方を改善しても、休養感は戻りません1。
いびきを指摘されたことがある、日中の眠気が強い、朝の頭痛がある。こうした場合は、生活の工夫を続けるより先に相談したほうが早く進みます。
今日から見られること
ここでも、当てはまるかどうかと、数えられるかどうかを分けておきます。
「睡眠障害」「すっきりしない朝」は、多くの説明が原因として名乗りを上げる症状です。栄養素不足の一覧にも、検査結果の症状一覧にも入っています。一般の人の9割が、週に何個かこうした症状を経験しています。
対して、この記事で見てきた睡眠休養感は、指針が採用している指標です。当てはまるかどうかではなく、自分で答えられる問いになっています。
| 見るもの | 手がかり |
|---|---|
| 眠っている時間 | 6時間を切っていないか。切っているなら、まずここ |
| 床にいる時間 | 必要以上に長くしていないか。延ばすと質は下がる |
| 朝の感覚 | 「休まった」と感じるか。これが公的指針でいう「質」 |
| 年齢 | 45歳で6.5時間なら、短いのではなく年齢どおり |
| 前夜の条件 | お酒を飲んだ日は後半の質が落ちます |
順番があります。量が足りていないなら、質の工夫より先に量です。量は足りているのに休養感が低いなら、生活の工夫か、病気が隠れていないかの確認へ進みます。
検査で測る睡眠の指標と、本人が感じる休まり方は、あまり一致しません。ウェアラブル端末が出す「深い睡眠 32分」という数字より、朝の感覚のほうが公的指針の見ている指標に近い、ということになります。
「質」は、数字ではなかった
睡眠の質を上げようとして、装置やアプリの数値を追いかけると、行き先が分からなくなります。指標が違うからです。
公的指針が見ているのは、朝起きたときに休まったと感じるかどうかでした。検査はそれぞれ違う問いに答えていて、睡眠の検査もその例外ではありません。そして、そこへ近づく方法として挙げられているのは、生活習慣と睡眠環境の見直しです。特別なものは入っていません。
まず、眠っている時間が6時間を切っていないか。次に、床にいる時間を必要以上に延ばしていないか。この2つを確かめるところからで、十分に始められます。寝つきが気になるなら、最後にカフェインを摂った時刻も同じくらい確かめやすい項目です。
参考文献・参考資料
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
本記事は公的な指針の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。必要な睡眠時間には個人差があり、記載の数字がそのまま当てはまるとは限りません。
SNSでフォロー
最新記事や、ここだけのコンテンツをお届けします。