統合医療かどうかは、手法ではなく使い方で決まる
「統合医療」は、使う人によって指すものが違う言葉です。公的機関の定義から、何を含み、何を含まないのかを確かめます。
この言葉は、使う人によって指すものが違います。西洋医学に代わる何か、と受け取る人もいれば、東洋医学のことだと考える人もいる。実際にはどちらとも少し違っていて、この言葉には比較的はっきりした定義があります。
用語を整理することは、それ自体が目的ではありません。ただ、何を指しているのかが曖昧なままだと、期待するものと実際に受けられるものがずれます。ここでは、公的機関がこの言葉をどう定義しているかを確認しておきます。
「一緒に使う」か「代わりに使う」か
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、この分野の用語を整理した文書を公開しています。そこでの区別は、驚くほど単純です。
主流でないアプローチを、通常医療と一緒に使う場合、それは「補完的(complementary)」。通常医療の代わりに使う場合は「代替的(alternative)」。分ける基準は、手法の中身ではなく、通常医療との関係です1。
同じ鍼灸でも、標準的な治療と併用すれば補完的であり、標準治療をやめて代わりに行えば代替的になります。呼び名を決めているのは手法ではなく、標準治療と一緒に使うか、代わりに使うかです。
そのうえで「統合的ヘルスケア(integrative health)」は、通常医療と補完的アプローチを協調のとれたかたちで結びつけるものとされています。複数の介入を組み合わせること、そして人を全体として捉えるケアを目指すことが強調されています1。
ここから分かるのは、統合医療が「通常医療を置き換えるもの」としては定義されていない、ということです。定義上、通常医療は前提として含まれています。
何が含まれるのか
NCCIHは補完的アプローチを、主にどこから働きかけるかで三つに分けています。ハーブ・ビタミン・サプリメント・プロバイオティクスなどの栄養的なもの、マインドフルネスなどの心理的なもの、マッサージや脊椎マニピュレーションなどの身体的なもの1。
加えて、心理と身体を組み合わせたもの(ヨガ、太極拳、鍼灸)、心理と栄養を組み合わせたもの(マインドフルな食事)といった複合的な分類も置かれています1。
この一覧を見て気づくのは、範囲がかなり広いことです。科学的な検討が進んでいるものと、ほとんど検証されていないものが、同じ枠の中に同居しています。「統合医療にはエビデンスがある/ない」という言い方が噛み合わないのは、これが特定の手法を指す言葉ではなく、使い方の呼び名だからです。
「西洋医学 対 東洋医学」で考えると、何が見えなくなるか
日本では、この分野が東西の対立として語られることが多くあります。近代医学と伝統医学、部分を診る医学と全体を診る医学、というように。
この対比が広まった理由は分かります。実際、身体をどう捉えるかについて、体系ごとの違いはあります。ただ、この図式を前提にすると、いくつか見落としが生じます。
ひとつは、上で見た定義が地理や伝統ではなく、通常医療との関係で線を引いていること。マインドフルネスも脊椎マニピュレーションもサプリメントも、東洋のものではありません。
もうひとつは、検証のされ方が体系ごとにまとまっているわけではないこと。漢方の中にも、比較的検討が進んでいるものとそうでないものがあります。近代医学の中にも、高い確実性の根拠を欠く介入は多く残っています。確からしさは体系の名前ではなく、一つひとつの方法ごとに違います。
三つめは、対立図式にすると「どちらを選ぶか」という問いになってしまうこと。定義上、統合医療は選択の問題ではなく、組み合わせ方の問題です。
期待と実際のあいだ
日本では、厚生労働省が「統合医療」に関する情報発信事業(eJIM)を運営し、補完・代替療法とどう向き合い利用したらよいのかを考えるための、エビデンスに基づいた情報を紹介しています2。公的機関がこうした情報提供を行っていること自体が、この領域の性質を表しています。すでに使っている人がいる。だから、勧めるのでも禁じるのでもなく、判断できるだけの情報を出す。そういう立場です。
その立場は、eJIM自身の3分の解説でも確かめられます。
実際、統合医療に関心を持つ理由は人によってかなり違います。標準治療で十分に改善しない症状がある。副作用の負担が大きい。数値だけでなく生活全体を見てほしい。原因がはっきりしないまま経過している。
これらはどれも切実な動機で、否定されるべきものではありません。ただ、動機が切実であることと、選んだ方法が効くことは別の話になります。
何かを試して調子が良くなったとき、それがその方法に固有の効果なのかどうかは、考えてみると意外に切り分けが難しいものです。ここで働きやすいのが、確実性への期待でしょう。標準的な医療で「はっきりしない」と言われた人にとって、明快な説明を提示してくれる場所は魅力的に映ります。ただ、説明が明快であることと、根拠が強いことは関係がありません。むしろ、まだ分かっていない領域ほど、断定的な説明が現れやすいのです。
統合医療の中にも、そういう語られ方をするものがあります。定義に照らせば通常医療と協調するはずのものが、実際には代わりに使われている場合もあります。
確かめられそうなこと
何かを検討するとき、確認しやすい点がいくつかあります。通常医療と併用する前提になっているか。標準的な治療をやめることが条件になっていれば、それは定義上「代替的」であって統合的ではありません。
主治医と共有できる形になっているか。何を、どれくらい、いつから使っているかを伝えられる状態なら、相互作用や重複を確認できます。主治医に言いにくいと感じるなら、なぜそれを使っているのかが自分の中でも整理できていない可能性があります。
そして、その手法について何がどこまで調べられているか。同じ「統合医療」の枠にあっても、検証の進み具合はまったく違います。枠ではなく、個々の手法で見るしかありません。
言葉が広いままだと、判断もできない
統合医療という言葉は、幅が広い。だからこそ、この言葉のまま賛成も反対もできません。含まれているものが違いすぎるからです。
この考え方が、日本の診療ガイドラインの側から求められている例もあります。起立性調節障害は身体疾患に分類されたうえで、心理社会的な要因を含めて包括的に評価することが求められています。身体か心かで分けない、という姿勢がガイドラインに書かれている珍しい場面です。
NCCIHの定義に立ち返れば、この言葉が言っているのは「組み合わせて、協調させる」という一点です。何を組み合わせるかは、そこには含まれていません。中身は、その都度こちらが確かめることになります。
いま関心を持っている方法があるなら、それは通常医療と並べて使うものとして提示されているでしょうか。それとも、代わりに使うものとして語られているでしょうか。この一点を見るだけでも、置かれている場所は見えてきます。
この媒体が、どこに立っているか
この記事の基準は、この媒体自身にも当てはめます。
me:LABは、バイオレゾナンス検査(RESONA-LAB)とサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています。同社の監修医師は、表参道ウェルネス統合医療クリニック院長の森嶌淳友医師です(運営について)。
だから、この記事で書いた3つの確認点は、そのまま自社に返ってきます。通常医療と併用する前提になっているか。主治医と共有できる形になっているか。何がどこまで調べられているか。
| 立場 | |
|---|---|
| 検査結果の医学的解釈 | 書きません。報告書自身が「疾病の診断や治療を目的とするものではない」と記しています |
| 標準的な治療の代わり | 置きません。服用中の薬を自分の判断で減らさないよう、繰り返し書いています |
| 書いているもの | 公的機関・学会・教科書にある数字と、その出どころ。入口・上限・半減期のように、確かめられる形のもの |
| 書けないもの | 特定の製品が何かを改善するという主張。その形式の根拠が存在しないため |
「統合医療だから良い」も「統合医療だから怪しい」も、この記事の立場ではありません。枠ではなく、個々の手法について、どこまで数字があるかを見る。それだけです。
確かめ方は2つです。まず、いま使っているものが標準治療と併用なのか、代わりなのか。ここで補完的か代替的かが決まります。呼び名を決めているのは手法ではなく、この関係のほうでした。
次に、その手法単体について誰を対象に、何と比べて、どれくらいの差なのかを探します。「統合医療」という枠に答えはありません。答えがあるのは、鍼なら鍼、サプリメントならその成分の側です。
参考文献・参考資料
- National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH), National Institutes of Health. Complementary, Alternative, or Integrative Health: What’s In a Name? 2021年4月更新. https://www.nccih.nih.gov/health/complementary-alternative-or-integrative-health-whats-in-a-name
- 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』(eJIM)https://www.ejim.mhlw.go.jp/
本記事は用語の整理であり、特定の療法の推奨や否定、個別の診断・治療に代わるものではありません。
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