「体にいい」表示を、棚の前で読み分ける
機能性表示食品は、その商品を人で試していなくても表示できます。含まれる成分について過去に行われた研究をまとめれば、届け出られるからです。
そして消費者庁は「トクホと異なり、国が審査を行いません」と明記しています。同じ棚に並んでいても、裏にあるものが違います。その違いは、パッケージのどこかに書いてあります。
ただし書き方が制度ごとに違い、しかも2026年9月に表示ルールの経過措置が終わったばかりで、店頭には新旧のパッケージが混在しています。
まず、3つしかない
食品に健康に関する機能を表示できるのは、保健機能食品と呼ばれる3種類だけです。それ以外の食品に「特定の保健の目的が期待できる」と書くことは、食品表示基準第9条で禁じられています1。
「国が審査していない」は、パッケージに書いてある
機能性表示食品について、消費者庁はこう説明しています。事業者が科学的根拠などを販売前に届け出れば機能性を表示できる制度であり、「特定保健用食品(トクホ)と異なり、国が審査を行いませんので、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う必要があります」3。
そしてこの趣旨は、パッケージへの記載が義務づけられています。食品表示基準が定める現行の文言はこうです1。
本品は、特定保健用食品と異なり、機能性及び安全性について国による評価を受けたものではありません。届け出られた科学的根拠等の情報は消費者庁のウェブサイトで確認できます。
トクホとの違いは、消費者庁自身が1分の動画にまとめています。
この文言は改正されたもので、経過措置が終わって完全に適用されたのは2026年9月1日です4。それ以前の表示は「消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません」という書き方でした。いま店頭にある商品には、両方が混在しています。
なお「個別審査を受けたものではありません」という文言は、現在は栄養機能食品の表示として残っています1。同じ言い回しが別の制度を指すことになったので、ここは混同しやすいところです。
届出の根拠は、その商品の試験とは限らない
ここが、読み解きの実務で最も効く点です。
消費者庁の「機能性表示食品の届出等に関する手引き」によれば、機能性の根拠として認められるのは、その商品を人で試した臨床試験だけではありません。過去の研究を決められた手順で集めて総合する方法も認められています。システマティックレビューと呼ばれるもので、しかも対象は「その商品について」と「含まれている成分について」の二通りが認められています5。
3つ目は、その商品を人で試していなくても届け出られるということです。含まれる成分について過去に行われた研究をまとめれば足ります。
実際の内訳が調べられています6。

システマティックレビューは本来、研究の中でも確実性の高い位置にあります。ただしそれは、集めた研究が十分にあり、方法が適切であることが前提です。組み入れ論文が1本のレビューは、実質的にその1本の研究と同じ重みしか持ちません。
なお、これは2022年時点のデータです。制度はその後改正され、2025年4月からは、研究の集め方と選び方を国際的な手順に沿って報告することが求められるようになりました7。
「国が認めた」と書いてあったら、それは違反である
制度が禁じている表現も、はっきりしています。
食品表示基準第9条は、機能性表示食品について「疾病の治療効果又は予防効果を標榜する用語」と「消費者庁長官の評価、許可等を受けたものと誤認させるような用語」の表示を禁じています1。
そして実際に、これを理由とする処分があります。2023年11月、消費者庁はある機能性表示食品について景品表示法に基づく措置命令を出しました。認定された不当表示には、効果の裏づけ不足に加えて、次のものが含まれています8。
「消費者庁が認定した機能性表示食品です。」
「国が痩せると認めたサプリ」
命令書には「実際には、消費者庁又は国が本件商品に……効果が得られることについて、認めた事実はない」と記されています8。
消費者庁自身も、この件を代表例として「公表されている届出内容を超えた広告を鵜呑みにしないよう御注意いただきますようお願いします」と注意喚起しています3。
根拠がひとつ崩れると、88件が連鎖した
届出制がどう機能するかを示した出来事があります。
2023年6月、別の事業者の機能性表示食品2商品に措置命令が出されました。消費者庁は表示の裏づけとなる資料の提出を求めましたが、提出された資料は合理的な根拠を示すものとは認められませんでした9。
注目すべきはその後です。消費者庁は、この2商品と同一成分で科学的根拠が同一だった他の88件の届出について、疑義を指摘し回答を求めました。結果は、科学的根拠があると主張したもの0件、撤回の申出88件でした3。
ひとつの根拠が多数の商品で共有されていた、ということでもあります。パッケージが違っても、後ろにある研究が同じことはありえます。
制度は「一つの成分に、一つの機能」しか扱えない
ここまでの話には、前提として置かれている構造があります。
届出には機能性関与成分を特定できることが必要で、表示できるのは「特定の保健の目的」です。この制度に載せるには、あらかじめ「どの成分が、どの指標に、どう働くか」の形に整理されていなければなりません。
これは制度の欠陥ではありません。検証可能にするには、そう切り分けるほかないからです。
ただし、読む側にとっては意味があります。表示されているのは、その成分がその指標に対して示した結果であって、その人の体調全体についての主張ではありません。「脂肪の吸収を抑える」は、脂肪の吸収という一点についての届出であり、体重や体調がどうなるかは別の話です。
体調は多くの場合、食事・睡眠・活動量・ストレス・服薬などが同時に関わって動きます。制度上表示できる形になった時点で、その複数性は落とされています。だから表示を読むときは、何が測られたのかと、自分が変えたいことが同じかどうかを分けて見ることになります。
棚の前で、確かめられること
先に1つ。「無添加」を根拠にした健康や安全の主張は、書けなくなりました。2022年のガイドラインが、不使用表示を健康・安全と関連付ける表示を類型の1つに挙げています。理由は「事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難」だからです。
ここまでを踏まえると、確認できることは絞られます。
| 見る場所 | 分かること |
|---|---|
| 「機能性表示食品」「特定保健用食品」「栄養機能食品」の別 | 国が審査したのか、事業者が届け出たのか |
| 届出番号 | 消費者庁のデータベースで根拠を辿れる |
| 届出情報の「機能性の科学的根拠」欄 | 臨床試験か、システマティックレビューか。後者なら何本の論文を組み入れたか |
| 表示されている機能性の文言 | 届出された範囲を超えた広告になっていないか |
届出情報は消費者庁のサイトで誰でも検索できます。組み入れられた論文の本数まで書かれています。
そのうえで実際に足すかどうかを決めるなら、その前に片づく問いがいくつかあります。
「根拠がある」の中身が、制度ごとに違う
最後に、制度の外側があることを書いておきます。
「デトックス」「解毒」「毒素を出す」という表示には、機能性表示食品のような届出制度が対応していません。何という物質が、どれだけ減ったのかを示さないため、そもそも届出の形式に乗りません。
2015年の総説は、市販のデトックス食について「これを支持する臨床的な根拠はきわめて乏しい」とし、有効性を評価した無作為化比較試験は行われていないと書いています。
棚の前で確かめられることは、ここでも同じです。何が、どれだけ変わると書いてあるか。物質名も数字もないとき、それは根拠の水準が低いのではなく、確かめようがないということです。
一方で、体が不要なものを外へ出す経路そのものは、生理学の教科書に物質名まで書かれています。仕組みが実在することと、ある商品がその仕組みを高めることは、別の主張です。
この制度は、機能性の表示を可能にすると同時に、その根拠を公開させる仕組みでもあります。パッケージの一文だけを見ると差が見えませんが、後ろにあるものは大きく違います。
国が個別に審査したのか。事業者が届け出たのか。届け出たとして、その商品を人で試したのか、成分についての過去の研究をまとめたのか。まとめたとして、何本あったのか。
「根拠がある」は、ここまで分解できます。分解しないまま受け取ると、根拠の強さの差が消えます。
参考文献・参考資料
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第9条ほか。e-Gov法令検索
- 消費者庁 食品表示課「機能性表示食品の今後について」令和6年9月(数値は令和6年8月2日時点) PDF
- 消費者庁「機能性表示食品について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
- 消費者庁「食品表示基準の一部改正の施行に関するタイムスケジュール」(公布 令和6年8月23日/施行 令和7年4月1日/適用 令和8年9月1日) PDF
- 消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する手引き」(制定 令和7年3月25日 消食表第273号/一部改正 令和7年10月1日 消食表第711号) PDF
- 鈴木郁功, 千葉 剛, 吉松嘉代, 竹林 純. 機能性表示食品の届出情報における機能性の科学的根拠に関する調査. 食品衛生学雑誌. 2024;65(2):31-39. doi:10.3358/shokueishi.65.31 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38658345/
- 消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」(令和7年4月1日からPRISMA声明2020準拠) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search/
- 消費者庁「株式会社アリュールに対する景品表示法に基づく措置命令について」令和5年12月5日公表 https://www.caa.go.jp/notice/entry/035547/index.html
- 消費者庁「さくらフォレスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」令和5年6月30日 https://www.caa.go.jp/notice/entry/033865/
本記事は表示制度と公表情報の整理であり、特定の商品の評価や推奨を目的としたものではありません。また、疾病の診断・治療・予防に関する情報を提供するものでもありません。制度は改正されることがあるため、最新の内容は消費者庁の公表資料をご確認ください。
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