出す力を上げたいとき、どこを見ればいいか
医学の教科書は、胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない、潜在的に有害な脂溶性物質の主要排泄経路」と書いています1。
そこへ出されるものとして具体的に挙げられているのは、ビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質、そして重金属です1。
つまり体の出口は、尿だけではありません。尿から出せないものが通る道が、別にあります。そしてその道の終点は、便です。
腎臓が扱えないものがある
体から何かを外へ出すとき、まず思い浮かぶのは尿です。腎臓が血液を濾過して、不要なものを尿に混ぜて捨てる。これは正しい。
ただし、腎臓が扱えるのは水に溶けるものです。脂に溶けやすい物質は、濾過されても再吸収されてしまいます。
そこで肝臓が、二段階の変換を行います。第一相で分子に手をかけて反応しやすい部分を作り、第二相で別の分子をくっつけて水に溶けやすくする。水に馴染む形になれば、尿から出せます。
ただし、この変換だけでは足りないものがあります。変換しても水に溶けにくいままのもの、分子が大きすぎるもの。それらの行き先が胆汁です。

胆汁は、脂肪の消化だけの液ではない
胆汁と聞いて出てくるのは、たいてい「脂肪の消化を助ける」という説明です。それも合っています。教科書も、脂肪吸収の促進が胆汁の主な機能だと書いています1。
ただし同じ教科書が、続けてもう一つの役割を挙げています。潜在的に有害な外因性脂溶性物質と、内因性基質の主要排泄経路であること1。
| 物質 | |
|---|---|
| ビリルビン | 古い赤血球を分解してできた色素 |
| 胆汁酸 | 脂肪の吸収を助ける。大部分は回収される |
| コレステロール | 体外へ出す主要な経路のひとつ |
| 重金属 | 教科書が名指しで挙げている |
| リン脂質・酵素・ビタミン |
量も具体的です。肝細胞は1日に600〜1000mLの胆汁を分泌します1。ペットボトル1本から2本分が、毎日この経路を流れています。
出したものが、戻ってくる仕組みもある
胆汁は腸へ出たあと、そのまま全部が便になるわけではありません。
胆汁酸の95%は、回腸で再吸収されて肝臓へ戻ります。便から失われるのは5%で、その分は肝臓で新しく作られて補われます1。この行って戻る流れを、腸肝循環といいます。

ここは慎重に読む必要があります。95%というのは胆汁酸の数字であって、胆汁に出されたすべての物質がこの割合で戻るという意味ではありません。再吸収されるかどうかは物質によって違います。
それでも、構造としてはっきりしていることがあります。胆汁に出されたものは、いったん腸に置かれる。そこから先、便として出ていくか、腸に留まるかで、体に残る量が変わります。
便通が、出口の話でもある理由
ここまでを並べると、便の位置づけが変わります。
便は「消化のあとの残りかす」だけではありません。肝臓が処理して、尿からは出せないと判断したものが送られてくる先でもあります。
だから便通の診断基準が、回数だけでなく、いきみ・硬さ・残便感まで6項目で見ているのは、腸の快適さだけの話ではないことになります。通過が滞れば、腸に置かれている時間が延びます。
そして通過に関わるものには、数字があります。食物繊維の目標量は30〜64歳の男性で22g、女性で18g。実際の摂取量は12.45gと11.5gでした。
金属についても、同じ向きの数字があります。ニッケルの場合、経口摂取のうち腸から吸収されるのは1〜10%。90〜99%は、吸収されずに便として出ていきます2。
つまり金属には、2つの出方があります。吸収されずにそのまま通過する分と、吸収されて肝臓で処理され、胆汁に乗って腸へ戻される分。どちらも、最後は腸を通ります。
この構造があるので、「溜まっているかもしれない」に対して、便の通過は無関係ではありません。口の中の金属や、食品に含まれる金属についても、経路はここへ集まります。
「出す」を、商法から取り戻す
「デトックス」という言葉は、いま使いにくい状態にあります。物質名が書かれていない「毒素」を出すという商品や施術が多く、出たかどうかを誰も確かめられないからです。
ただ、そこで話を止めると、出す側そのものが無かったことになります。
この記事で並べたのは、すべて標準的な生理学の教科書に書かれていることです。肝臓が二段階で変換すること。水に溶けない物質の主要排泄経路が胆汁であること。そこに重金属が含まれること。1日600〜1000mL分泌されること。95%が回収され、5%が便へ出ること。
出す側は、実在します。怪しいのは、その仕組みを使って何かを売るときに、何が出たのかを言わない売り方のほうです。
入れる側だけでは、残る量が決まらない
健康の話は「何を食べるか」「何を足すか」に寄ります。そちらは選びやすく、買いやすいからです。
ただ、入る量を完全には管理できないものもあります。そういうとき、体に残る量を決めているのは入る量と出る量の差のほうです。
そして、どちらから先に手をつけるかには順番があります。出口が滞っていれば、上流を動かしても行き場がありません。
尿と便。出口は2つあります。片方は水に溶けるものを、もう片方は溶けないものを担当しています。入れる側と一緒に出す側も見るのは、この構造があるからです。
今日数えられるのは、便が出た回数です。胆汁に出されたものは、いったん腸に置かれます。そこで止まっている時間が長いほど、戻ってくる分が増えます。
国際的な基準の線引きは週3回未満です。毎日でなくても基準の外ではありませんが、何回だったかを知らないままでは、出口の側が動いているかを判断できません。1週間、数えるところからです。
参考文献・参考資料
- Dave HD, Shumway KR, Al Obaidi NM. Physiology, Biliary. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 最終更新 2022年12月15日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537107/
- 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173.(図1「ニッケルの体内代謝」) https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf
本記事は生理機能の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・検査・施術の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。再吸収される割合は物質によって異なり、記載の数値がすべての物質に当てはまるわけではありません。肝機能・胆道系の検査値について指摘を受けている方は、個別の評価が行われている段階で、この記事の範囲には入りません。
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