「解毒」を高めるために、実際に必要なもの
「解毒」が実際にしているのは、物質に別の分子をくっつけて、水に溶ける形へ作り変えることです。くっつける材料の名前まで分かっています。
グルクロン酸、硫酸、グルタチオン、グリシン、タウリン、グルタミン酸、アセチル基、メチル基。これが第II相反応で使われるものの一覧です1。
毒を消しているのではありません。捨てられる形に変えています。
そのままでは、捨てられない
食べ物、薬、環境中の化学物質。体の外から入ってきた物質の多くは、脂に溶けやすい性質を持っています。
脂に溶けやすいものは、そのままでは尿に混ぜて捨てられません。腎臓で濾過されても、再吸収されてしまうからです。
そこで、体は形を変えます。水に馴染む形にしてから捨てる。この一連の作り変えを、生体内変換(biotransformation)といいます。
この処理の大部分は肝臓の肝細胞で行われますが、脂肪組織、腸、腎臓、肺、皮膚でも起きています1。肝臓だけの話ではありません。
第I相:反応しやすい部分を作る
一段階目は、分子に手をかけて、後で何かをくっつけられる場所を作る工程です。
| 反応 | |
|---|---|
| 酸化 | シトクロムP450による。最も多い |
| 還元 | |
| 加水分解 |
シトクロムP450は、細胞内の小胞体に膜結合している酵素群です。中でもCYP3A4が最も多く、全CYP450活性の約50%を占めます1。
この酵素の名前は、薬の説明書で見たことがあるかもしれません。「この薬と一緒に飲まないでください」という組み合わせの多くは、同じ酵素を取り合うために起きます。
第II相:くっつけて、水に溶かす
二段階目が、この記事の中心です。第I相で作った場所に、別の分子をくっつけます。

| 反応 | くっつけるもの |
|---|---|
| グルクロン酸抱合 | グルクロン酸。最も多い |
| 硫酸抱合 | 硫酸 |
| グルタチオン抱合 | グルタチオン |
| アミノ酸抱合 | グリシン、タウリン、グルタミン酸 |
| アセチル化 | アセチル基 |
| メチル化 | メチル基 |
ここまで具体的に分かっています。「解毒力」という総合点はありませんが、何をくっつけているかは名前で並べられます。
この段の速さは、人によって違う
第I相を担うP450には、遺伝子型によって働きの強さが違うものがあります。CYP2C19の場合、働きが弱い型は欧米で2〜5%、東アジアで13〜23%です。
ただし、これは薬の効き方で確立した知見です。食品や環境中の物質の処理速度に同じように当てはまるかは、まだ別の話です。
順番が狂うと、逆に働く
二段階であることには、見落としやすい意味があります。
第I相でできる中間代謝物は、元の物質より反応しやすくなっています。これは薬の場合には利点で、体内で活性型に変わるプロドラッグはこの仕組みを使います1。
ただし裏返すと、第II相が追いつかなければ、反応しやすい状態のものが溜まるということでもあります。
だから「解毒力を高める」という言い方は、この構造を知ると分かりにくくなります。第I相を速めるのか、第II相を速めるのかで、意味が逆になりうるからです。
止めたり、再開したりする器官ではない
「臓器を休ませる」という言い方が、断食やクレンズの説明でよく使われます。
ただ、この処理は常時進行しています。肝臓は血漿タンパク質を作り続け、腎臓は再吸収を続けています。作業を止めたり再開したりする器官ではありません。
くっつけるものは、どこから来るか
第II相でくっつけるものの正体を辿ると、すべて糖とアミノ酸に行き着きます。
| くっつけるもの | 何からできているか |
|---|---|
| グルクロン酸 | グルコース(糖)から作られる |
| グルタチオン | 3つのアミノ酸がつながったもの |
| グリシン、タウリン、グルタミン酸 | アミノ酸そのもの |
| 硫酸 | 含硫アミノ酸に由来する硫黄 |
| メチル基 | メチオニン(アミノ酸)に由来 |
並べると分かることがあります。特別な物質は一つも出てきません。糖とアミノ酸、それだけです。
つまり解毒は、材料を消費する反応です。これは比喩ではなく、分子の名前まで分かっている話です。そして材料は、日々の食事から来ています。
反応を回す側にも、栄養素が要る
くっつける分子とは別に、その反応を担う酵素の側があります。
シトクロムP450も、抱合を行う酵素も、単独では働きません。補因子と呼ばれる金属やビタミンが要ります。マグネシウムは300以上の酵素反応に関わるミネラルで、鉄と銅は酸化還元を担う酵素の構成要素です。
RESONA-LABのレポートは、検査で測るビタミン・ミネラルについて、栄養素ごとに「解毒への関与」を記載しています2。
レポートはこの一覧のあとに、こう書いています。「検査で測るビタミン・ミネラルは、排出経路の鍵を握る栄養素。つまり、『何が溜まっているか』だけでなく、出す力(排出力)が足りているかまでわかります」2。
なおレポート自身が、この内容は一般的な栄養学的知見に基づくものであり、特定の製品を推奨するものではないと注記しています2。
ただし、ここから先に線があります。「特定の栄養素を足せば処理が速くなる」とは、まだ言えません。足りない状態から足したときと、足りている状態から足したときでは、起きることが違うためです。足すかどうかの前に、足りているかどうかという順番が効いてくるのは、ここでも同じです。
この工程が動いたことを、人で測った例がある
第II相が実際に動いたかどうかは、尿に出てきた形を測れば分かります。
大気汚染の大きい地域で行われた291人の無作為化試験では、ブロッコリースプラウト飲料を飲んだ群で、ベンゼン由来のメルカプツール酸の尿中排泄が61%増えました。メルカプツール酸は、第II相で処理されたあとに尿から出ていく形の1つです。
この工程は、外から動くことがある。ただしその試験が測ったのは出てきた量であって、体内に残っている量でも、健康アウトカムでもありません。
変換のあとに、出口がある
ただし、この工程を通らない入り方もあります。
口から入ったものは、腸から吸収されたあと肝臓を経由してから全身へ回ります。吸って入ったものは、肺から直接全身の循環に乗ります。第I相も第II相も経由しません。
食品安全委員会のワーキンググループ報告は、吸入曝露についてこう書いています。「粉塵や煙として直接体内に入る。肝臓の解毒を経由しないので、腎障害が起こりやすい」。
つまりこの二段階は、すべての入口に働くわけではありません。どの入口から入ったかで、処理の経路そのものが変わります。
第I相と第II相を経て水に溶ける形になったものは、腎臓から尿として出ます。
ただし、それでも尿から出せないものがあります。その行き先が胆汁で、終点は便です。医学の教科書は胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない、潜在的に有害な脂溶性物質の主要排泄経路」と書いていて、そこに出されるものに重金属が挙げられています。
つまり体の処理は、変換して、出すという二つの段階でできています。変換だけ進んでも、出口が動いていなければ完結しません。
「解毒」は、抽象語ではない
この記事に出てきたのは、すべて標準的な生化学の教科書に載っている名前です。
シトクロムP450。CYP3A4。グルクロン酸抱合。硫酸抱合。グルタチオン抱合。グリシン、タウリン、グルタミン酸。アセチル化。メチル化。
解毒は、物質名で語れる範囲の話です。怪しくなるのは、この仕組みを使って何かを売るときに、何が出たのかを言わないときです。
そしてどこから手をつけるかには順番があります。上流だけ速めても、出口が動いていなければ途中に溜まります。
仕組みが実在することと、その仕組みを名乗る商品が効くことは、別のことでした。入れる側と出す側を一緒に見るのは、前者が実在するからです。
そして、くっつける材料には名前がついています。グルクロン酸ならグルコース、メチル基ならメチオニン、硫酸なら含硫アミノ酸。すべて糖とアミノ酸から作られます。
特別な物質は1つも出てきません。だから確かめられるのは、食事の量が極端に減っていないかです。断食や糖質の大幅な制限をしているなら、上流の材料もそのぶん減っています。「休ませる」つもりの行動が、材料を止める側に働くことがあります。
参考文献・参考資料
- Phang-Lyn S, Llerena VA. Biochemistry, Biotransformation. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 最終更新 2023年8月14日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544353/
- 株式会社bio medical「バイオレゾナンス検査結果報告書」サンプル(各栄養素の役割と不足したときの影響/排出・代謝の仕組み) RESONA-LAB 公式サイト
本記事は生化学の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品・施術の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。特定の栄養素の摂取が生体内変換の速度を変えるかどうかについて、十分な検証はなされていません。服用中の薬の飲み合わせは、その薬ごとに決まっているもので、この記事の範囲には入りません。
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