「不足」と出た栄養素を、少ない手数で埋める
「不足」と出た栄養素は、出す側にも効いています。足りない分を補うだけの話ではありません。
体が不要なものを処理して外へ出すとき、第II相で別の分子をくっつけて水に溶ける形に変えます。そのくっつけるものは、グルクロン酸ならグルコース、メチル基ならメチオニン、硫酸なら含硫アミノ酸。すべて糖とアミノ酸から作られます。
つまり足りなければ、処理が滞ります。「不足」の欄は、入れる側の話に見えて、出す側の材料の話でもあります。
なぜ、測っても分からないのか
カルシウムとマグネシウムは、血液検査で測れます。それでも、その値からは足りているかが分かりません。理由は、体の作りにあります。

血液中のカルシウム濃度は8.5〜10.4 mg/dLという狭い範囲に保たれています。下がりそうになると、骨から補われて元に戻ります。つまり血液の値は、蓄えが減っていても正常のままでいられます。
マグネシウムも同じ構造です。体内には約25gあり、その50〜60%が骨に存在します。血清濃度が低下すると、腎臓での再吸収が増えると同時に、骨からマグネシウムが遊離して使われます1。
だから食事摂取基準は、これらの必要量を血液検査からではなく、体内蓄積量・尿中排泄量・経皮的損失量を積み上げる方法や、摂った量と出た量の差を測る出納試験から算出しています1。
報告書はマグネシウムについて、「マグネシウムの不足や欠乏を招く摂取量を推定することは難しい」とはっきり書いています1。
この3つは、測れば答えが出る
血液の値が蓄えをよく反映する栄養素もあります。こちらには、学会が定めた判定の基準まであります。
ビタミンD
血中25(OH)D濃度を測ると、足りているかどうかが数値で分かります。30 ng/mL以上で充足、20 ng/mL未満で欠乏。日本内分泌学会と日本骨代謝学会が2017年に公表した判定指針の線引きです2。
亜鉛
日本臨床栄養学会の『亜鉛欠乏症の診療指針2024』は、血清亜鉛値について60 µg/dL未満を亜鉛欠乏症、60〜80 µg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏としています3。測定は早朝空腹時が望ましいとされています。時間帯や食事で値が動くためです。
鉄
鉄には二段構えの指標があります。ヘモグロビンが貧血の有無を、フェリチンが貯蔵鉄の量を反映します。ヘモグロビンが正常でも貯蔵鉄が減っている状態はありうるため、この二つは別に見ます。
ただしフェリチンは炎症や感染で上がるため、一点の数値だけでは読めません。読める人と一緒に見る意味がある検査です。
葉酸
葉酸も血液で測れますが、何を測るかで意味が変わります。食事摂取基準は、体内の葉酸の栄養状態を表す指標として「短期的な指標である血清中葉酸ではなく、中長期的な指標である赤血球中葉酸濃度」に関する報告を基に検討した、と記しています4。
直前に食べたものが血清の値を動かします。習慣的に足りているかを見るなら、赤血球のほうです。
一覧にすると、こうなる
| 栄養素 | 血液の値で足りているか分かるか | 測る項目・注意 |
|---|---|---|
| ビタミンD | 分かる | 血中25(OH)D。学会の判定指針あり |
| 亜鉛 | 分かる | 血清亜鉛。早朝空腹時。診療指針あり |
| 鉄 | 分かる | ヘモグロビンとフェリチン。炎症で上がる |
| 葉酸 | 条件つき | 血清は短期、赤血球は中長期の指標 |
| 銅 | 条件つき | 血清銅、セルロプラスミン |
| カルシウム | 分からない | 血中は狭い範囲に保たれ、骨から補われる |
| マグネシウム | 分からない | 同じく、腎での再吸収と骨からの遊離で保たれる |
| カリウム・ナトリウム | 分からない | 血液の値は調節の結果。摂取量は尿から推定する |
| ビタミンA・C・E | — | 一般の診療で測ることは多くない |
ナトリウムについては、確かめる方法が別にあります。食事摂取基準は、24時間尿中ナトリウム排泄量からナトリウム摂取量を推定することができると記しています1。血液ではなく尿を見る、という切り替えです。
カルシウムとマグネシウムは、確かめようがない
ここは、はっきりさせておいたほうがいい部分です。
血液では分かりません。では食事記録ではどうか。こちらも、個人が自分でやって足りているかを判定できる精度にはなりません。食事摂取基準そのものが、これらの必要量を血液検査からではなく、体内蓄積量・尿中排泄量・経皮的損失量を積み上げる方法や出納試験から算出しています1。研究の設備で行う方法です。
報告書はマグネシウムについて、「マグネシウムの不足や欠乏を招く摂取量を推定することは難しい」とはっきり書いています1。
できるのは1つだけです。骨の状態が気になるなら、骨密度を測る。血液のカルシウム値ではなく、骨そのものを見る検査で、数値が出ます。
測れないものは、入れる側から見る
カルシウムとマグネシウムのように、血液で足りているかが分からない栄養素があります。そこで止まると、できることがなくなります。
確かめられないなら、入れる側を決めるほうが早い。栄養素ごとに、主な供給源は決まっています。
並べると、同じ食品が何度も出てきます。レバー、ナッツ、豆類、魚、海藻。数えると、この5つで12のうち10に関わっています。関わっていないのは、ビタミンC(柑橘類・ピーマン・ブロッコリー)とナトリウムだけです。
| 食品 | 関わる栄養素 |
|---|---|
| レバー | ビタミンA、葉酸、鉄、銅 |
| ナッツ | ビタミンE、マグネシウム、亜鉛、銅 |
| 豆類 | 葉酸、カルシウム(大豆製品)、マグネシウム、カリウム |
| 魚 | ビタミンD、カルシウム(小魚) |
| 海藻 | マグネシウム |
埋める対象が12あるのではなく、重なっている5つを先に置くほうが早いということになります。血液で確かめられるかどうかに関係なく、入れる側は同じです。
注意点が1つ。ナトリウムは日本人の場合、足りないより多い側にあるのが通常です。ここだけは増やす対象になりません。
全部をどうにかしようとしない
「不足」の欄に複数の栄養素が並んでいると、全部を埋めたくなります。
そこは止めたほうがいい理由があります。結果に添えられた「不足するとこうなる」という症状の一覧は、ありふれた症状を並べたもので、たいていの人に当てはまります。当てはまったことは、原因がそれだと示していません。
そして足すかどうかの前に、足りているかどうかという順番があります。並んだ項目を上から埋めても、どれが効いたのかは分かりません。一度に一つだけ変えるのは、ここでも同じです。
「不足」と「出す力」は、同じ材料の話
ここまでで、栄養素ごとの事情は分かれました。血液に反映されるもの、骨から補われて反映されないもの、尿から推定するもの。
ただ、体の中での使われ方には共通するところがあります。
不要なものを処理して外へ出すとき、くっつける材料は糖とアミノ酸から作られます。特別な物質は一つも出てきません。つまり「不足」の欄と「解毒機能」の欄は、同じ材料を見ています。
そして出す側には順番があります。上流の材料が足りていても、出口が滞っていれば行き場がない。逆に出口が動いていても、材料が足りなければ処理が進まない。
「不足」は、足りない分を補う話であると同時に、出す力の話でもあります。結果の4つの欄が別々の採点ではないのは、こういうところです。
12個を1つずつ埋めない
ここから先は、実際に何を見るかです。12の栄養素を1つずつ埋めようとすると、サプリメントが12本必要になります。そうはなりません。上の表のとおり、供給源が重なっているからです。
「不足」の欄に4つ5つ並んでいても、動かす場所は1つか2つで足りることが多いということです。
今日できるのは、「不足」に並んだ名前を、重なっている食品の表に当てることです。レバー・ナッツ・豆類・魚・海藻のうち、自分の「不足」にいちばん多く関わっている行が1つ見つかります。そこが、いちばん少ない手数で動く場所です。
参考文献・参考資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 ミネラル(多量ミネラル) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf(ナトリウム、カルシウム pp.255-256、マグネシウム pp.261-262)
- 日本内分泌学会・日本骨代謝学会・厚生労働省難治性疾患克服研究事業ホルモン受容機構異常に関する調査研究班. ビタミンD不足・欠乏の判定指針. 日本内分泌学会雑誌. 2017;93(Suppl):1-10. https://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/vitaminDmanual2017.pdf J-STAGE
- 日本臨床栄養学会編『亜鉛欠乏症の診療指針2024』 https://www.jscn.gr.jp/pdf/aen2024.pdf
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 ビタミン(水溶性ビタミン)葉酸 p.208 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316467.pdf
- RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans
本記事は栄養素の指標と検査項目の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査・製品・サプリメントの効果を示すものでも、実施や使用を勧めるものでもありません。どの検査が必要かは症状と状況によって異なります。
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