解毒を高めるなら、どこから手をつけるか
「解毒を高めたい」と思ったとき、先に動かすのは出口のほうです。肝臓ではありません。
理由は単純です。肝臓が処理して胆汁に出したものは、腸を通って便から出ていきます。出口が滞っていれば、上流をいくら動かしても行き場がありません。
順番があります。そして順番を逆にすると、逆に働くことがあります。
上流から動かすと、どこへ行くのか
体が不要なものを外へ出す経路は、2つあります。
水に溶ける形になったものは、腎臓から尿として出ます。問題は、もう一方です。
医学の教科書は胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない、潜在的に有害な脂溶性物質の主要排泄経路」とし、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています1。肝細胞は1日600〜1000mLの胆汁を分泌しています1。

胆汁は腸へ出ます。つまり、肝臓の処理を速めたところで、そのあと腸を通って便として出なければ、体の外には出ていません。
しかも、腸を通るのは胆汁に出された分だけではありません。ニッケルの場合、経口で入った量のうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は吸収されずにそのまま便として出ていきます3。
つまり出口としての腸には、2つの流れが来ています。吸収されずに通過する分と、いったん吸収されて肝臓で処理され、胆汁で戻される分。前者のほうが、量としては圧倒的に多い。口から入る金属について言えば、9割以上がこちら側です。
そして胆汁酸の場合、95%は回腸で再吸収されて肝臓へ戻ります1。腸に置かれたものが、そのまま全部出ていくわけではない、ということです。
順番を逆にすると、逆に働く
もう一つ、同じ構造が肝臓の内部にもあります。
異物の処理は二段階です。第I相で分子に手をかけて反応しやすい部分を作り、第II相で別の分子をくっつけて水に溶かす。
ここで、第I相でできる中間代謝物は、元の物質より反応しやすくなっています2。
つまり一段階目だけ速まって、二段階目が追いつかなければ、反応しやすい状態のものが溜まります。「解毒力を高める」という言い方が実際には分かりにくいのは、どちらを速めるかで意味が逆になりうるからです。
出口についても、同じことが言えます。上流だけ動かして下流が動いていなければ、途中に溜まる。
では、出口が動いているかをどう確かめるか
ここが、自分でできる部分です。
便通について、国際的な診断基準は6項目で見ています。回数はそのうちの1つにすぎず、線引きは「週3回未満」。残りの5つは、いきみ、硬い便、残便感、詰まった感じ、用手的な排便介助です。
| 見るもの | 手がかり |
|---|---|
| 便通 | 回数だけでなく、いきみ・硬さ・残便感。6項目のうち2つ以上が診断の基準 |
| 食物繊維 | 目標量は30〜64歳で男性22g・女性18g。実際の摂取量は12.45gと11.5g |
| 水分 | 固定の数字ではなく、渇きと尿の色 |
| お酒 | 日本人の4割強は処理能力が低い側。処理の順番を占有します |
どれも、特別な道具は要りません。そして、どれも上流ではなく出口の側です。
上流の側は、材料で決まる
出口が動いているなら、次は上流です。
第II相でくっつけるものの正体を辿ると、すべて糖とアミノ酸に行き着きます。グルクロン酸はグルコースから、メチル基はメチオニンから、硫酸は含硫アミノ酸から。特別な物質は一つも出てきません。
つまり上流の側は、材料を消費する反応です。足りなければ滞る。
ただし線があります。「特定の栄養素を足せば処理が速くなる」とは、まだ言えません。足りていない状態から足したときと、足りている状態から足したときでは、起きることが違うためです。足すかどうかの前に、足りているかどうか。順番はここでも同じです。
「出す」は、鍛えるものではない
「解毒力を上げる」という言い方には、鍛えれば強くなるという含みがあります。
ここまで見た構造は、そうなっていません。止めたり再開したりする器官ではなく、常時動いている工程です。肝臓は血漿タンパク質を作り続け、腎臓は再吸収を続けています。
だから断食で「臓器を休ませる」という発想が据わりが悪いのは、休めないからというだけでなく、材料まで一緒に減るからです。
できるのは、落とさないことと、詰まらせないことです。
自分の出す側が、いまどうなっているか
ここまでの話には、まだ空いているところがあります。
出口が動いているかは、便通と食事から見当がつきます。上流の材料が足りているかは、栄養素によって確かめ方が違います。血液の数値で線が引けるものと、食べている量から見るものがあります。
ただし、「いま自分の出す側がどうなっているか」を一つの形で見る手段は、一般の医療の中にありません。健康診断の肝機能・腎機能の項目は、いまの機能が落ちていないかを調べるもので、答えている問いが違います。
RESONA-LABの結果に解毒機能の欄があるのは、そこを見るためです。入れる側だけでは、体に残る量が決まらないからです。
今日できるのは、出口の側から1つ数えることです。上流の材料を足す前に、そこが動いているかで結果が変わります。
| 見るもの | 目安 |
|---|---|
| 便が出た回数 | 国際基準の線引きは週3回未満 |
| 水分の量 | 渇きと尿の色で見る。日本に目安量はない |
| 食物繊維 | 米・パン・麺・いも・果物が主な供給源 |
3つとも、今日から数えられます。材料の話はそのあとです。
入口と出口の両方については入ってくるものと、出す力に一覧で並べています。
参考文献・参考資料
- Dave HD, Shumway KR, Al Obaidi NM. Physiology, Biliary. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 最終更新 2022年12月15日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537107/
- Phang-Lyn S, Llerena VA. Biochemistry, Biotransformation. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 最終更新 2023年8月14日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544353/
- 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf
本記事は生理学と公的な基準の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品・施術の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。特定の栄養素の摂取や食事法が生体内変換・排泄の速度を変えるかどうかについて、十分な検証はなされていません。消化器の疾患で治療中の方、食事制限を受けている方は、内容が個別に決められています。この記事の範囲の外です。
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