糖質を減らすとき、一緒に減るものへの備え
糖質を減らすと、体から出す経路のひとつが細ります。米・パン・麺・いも・果物は、日本人の食物繊維の主な供給源だからです。
体の出口は尿だけではありません。肝臓は胆汁をつくり、尿からは出せない物質を便の側へ送り出しています。その便の通過に関わるのが食物繊維です。
そして日本人は、すでに食物繊維の目標量に届いていません。30〜49歳男性で目標22gに対し、実際は12.45gでした。
目標量が「残り」である、ということ
『日本人の食事摂取基準(2025年版)』は、炭水化物の目標量をこう説明しています。炭水化物がエネルギー源として重要な役割を担っていることから、たんぱく質及び脂質の残余として目標量(範囲)を設定した1。

順番が逆なのが要点です。「炭水化物はこれだけ必要だ」という研究から50〜65%が出たのではありません。他の2つを決めた結果、そこが空いた。
だから、この範囲を下回ったときに何が起きるかについて、基準は答えを持っていません。線が引かれていないことと、下回って大丈夫なことは別です。
なお、この%エネルギーにはアルコールから摂ったエネルギーも含まれます(基準表の脚注に明記されています)1。飲む人は、炭水化物の枠の一部を酒が占めていることになります。
砂糖にも、目標量はない
糖質制限の話で真っ先に減らされるのは砂糖ですが、糖類(単糖及び二糖類)に目標量は設定されていません。
報告書は理由を書いています。糖類の過剰摂取が肥満や齲歯の原因となることは広く知られているが、諸外国で指標の設定に多く用いられている added sugar 及び free sugar の摂取量の把握が日本において現状では困難であること、及び他国と日本における糖類摂取状況が大きく異なる可能性があることから、目標量は設定しなかった1。
害がないから設定しなかったのではありません。日本人が実際にどれだけ摂っているかを測る仕組みが、まだないからです。
減るのは、糖質だけではない
ここが、この記事でいちばん実務的な部分です。
糖質を減らすと、米・パン・麺・いも・果物が減ります。これらは日本人の食物繊維の主な供給源です。
そして食物繊維が関わっているのは、便の通過です。体が不要なものを処理して外へ出すとき、出口は尿だけではありません。肝臓の主な働きの一つが「胆汁をつくる」ことで、その役割は尿からは出せない物質を便側へ送り出すことでした。
つまり糖質を減らすという選択は、入れる側の話に見えて、出す側にも届きます。入れる側と出す側を一緒に見るのは、そのためです。
その食物繊維には、はっきりした目標量があります。

| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | 20以上 | 18以上 |
| 30〜64歳 | 22以上 | 18以上 |
| 65〜74歳 | 21以上 | 18以上 |
| 75歳以上 | 20以上 | 17以上 |
さらに、この目標量は理想の量ではありません。報告書は、成人の理想的な目標量は25g/日以上と考えられるが、現在の日本人の摂取実態を鑑み、実行可能性を考慮してこれよりも低く設定されていると書いています1。
効果の大きさについても数字があります。観察研究を含むメタ・アナリシスでは、25〜29g/日の摂取量で最も顕著な効果が観察されたと報告されています1。
つまり、下げられている目標量にすら届いていないところから、さらに糖質を減らすことになります。
減らすなら、どこから入れ直すか
糖質を減らすこと自体を止めるものではありません。減った食物繊維をどこから入れるかを、先に決めておきます。
穀類以外の供給源は、豆類、海藻、きのこ、野菜、ナッツです。ここを増やさずに主食だけ減らすと、目標量からの距離が開きます。
ただし、一度に大きく増やすと張りや不快感が出ます。報告書も、便秘の重症化予防を目的とした食物繊維の追加摂取について、1日10g・少なくとも4週間にわたる追加が勧められていること、腸にガスがたまるといった症状の悪化も報告されていることから、慎重に判断されるべきだとしています1。
成分表の版が変わると、数字も変わる
食物繊維の数字を扱うときの注意が1つあります。
日本食品標準成分表が七訂から八訂になったとき、測定法が変わりました。精白米は0.3g→1.5g、食パンは2.3g→4.2g(可食部100gあたり)。食品が変わったのではなく、測り方が変わったためです1。
そして目標量のほうは、七訂相当の測定法で算定されています。八訂を使ったアプリで計算すると、実際より高めの値が出ます。報告書も「八訂を用いた場合の値は高めに算出されることを考慮すべきである」と書いています1。
線が引かれていない場所と、引かれている場所
もう1つ、食物繊維が関わる場所があります。通過そのものです。
ニッケルの場合、経口で入った量のうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は吸収されずに便として出ていきます2。加えて肝臓が胆汁に出したものも腸へ送られてきます。医学の教科書は、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています。
つまり便として出る経路は、栄養の話であると同時に、入ってきたものが体を通り抜ける経路でもあります。糖質を減らすと食物繊維も一緒に減る、という構造が効いてくるのは、こちら側でもあります。
目標量22g・18gに対して、実際は12.45gと11.5g。出口が先で、上流があとという順番の中で、いちばん数字がはっきりしているのがこの差です。
炭水化物の目標量は、他の2つを決めた残りでした。糖類には目標量そのものがありません。「何%から制限なのか」に、日本の基準は答えを持っていません。
数字があるのは食物繊維です。30〜64歳の男性で22g、女性で18g。実際の摂取量は12.45gと11.5g。しかもこの目標量は、理想とされる25gから実行可能性を考慮して下げた値でした。
糖質をどれだけ減らすかは自分で決めることになります。そのとき手元にある唯一の数字が、食物繊維です。
そして食物繊維は、入れる側の項目でありながら、出す側の経路にも関わっています。減らした分をどこから入れ直すかは、その両方を動かす選択になります。
参考文献・参考資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 エネルギー・たんぱく質 1-4 炭水化物 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316464.pdf(食物繊維の摂取量 p.135、測定法の変更 p.136、便秘と食物繊維 p.137、概要 p.138、炭水化物の基準表 p.143、食物繊維の基準表 p.144)
- 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf
本記事は公的な基準の整理であり、個別の診断・治療・栄養指導に代わるものではありません。特定の食品・製品・食事法の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。必要量には個人差があり、記載の数値がそのまま当てはまるとは限りません。糖尿病などで食事療法を受けている方は、量が個別に決められています。この記事の範囲の外です。
SNSでフォロー
最新記事や、ここだけのコンテンツをお届けします。