銀歯が気になったとき、何が分かっているか
日本の保険診療で使われてきた銀歯は、金銀パラジウム合金です。金12%以上、パラジウム20%以上、銀40%以上。JIS規格で決まっています1。銀ではありません。
検査の蓄積の欄にパラジウム・銀・金が並んでいる理由は、ここにあります。日本皮膚科学会のガイドラインも「歯科金属はパラジウム、金、水銀、錫などを含有することが多い」と書いています2。
今日できることは1つです。口の中に金属が入っているか、鏡で見る。入れた年と部位は、かかった歯科医院のカルテに残っています。
「銀歯」の中身は、規格で決まっている
歯科鋳造用金銀パラジウム合金は、1956年にJIS T 6106として規格化されました。当初は金とパラジウムの合計が30%以上という規定でしたが、1974年に現在の「金12%以上、パラジウム20%以上」に変わっています3。
現行のJIS T 6106:2011は、化学成分として金12%以上、パラジウム20%以上、銀40%以上を規定しています1。実際に流通している製品は、金12%・パラジウム20%・銀40〜50%に集約されています3。
| 金属 | 規格上の下限 | 検査項目にあるか |
|---|---|---|
| 金 | 12%以上 | あり |
| パラジウム | 20%以上 | あり |
| 銀 | 40%以上 | あり |
| 銅ほか | 残余 | なし |
この合金は保険適用の材料で、価格も厚生労働省が告示しています。金・パラジウム・銀の地金相場が告示価格の±5%を超えて動いた場合、診療報酬改定の年以外にも4月と10月に価格が見直される仕組みがあります4。相場で値段が動くほど、中身は本物の貴金属です。
つまり「銀歯」という呼び名は、色から来ています。中身は3種類の貴金属の合金です。
口の中の金属は、体内に入る経路である
ここからが、蓄積の欄と関係する部分です。
日本皮膚科学会の『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』は、金属アレルギーを2つに分けています。接触した部位に皮膚炎が出る「金属接触アレルギー」と、金属が「生体内に吸収されることにより」全身に症状が出る「全身型金属アレルギー」です2。
後者の入口として、ガイドラインは食品と歯科金属を挙げています。金属は経皮・経粘膜・経腸管・経気道で吸収され、汗・乳汁・涙・尿・糞便として排泄されます5。歯科金属によるものは「歯科金属疹」と呼ばれることもあります。
そして、日本の陽性率の数字があります。日本皮膚免疫・アレルギー学会は1994年度から毎年約2,000名の規模でパッチテストの陽性率を集計していて、2016年度の上位10項目のうち5つが金属でした5。
| 金属 | 陽性率 |
|---|---|
| ニッケル | 24.8% |
| 金 | 23.2% |
| コバルト | 7.9% |
| 水銀 | 5.3% |
| クロム | 2.3% |
ニッケルと金の陽性率は女性に有意に高く、年々上昇しています。上昇の原因はピアスなどのアクセサリーの普及によるとされています5。
注意したいのは、パッチテスト陽性は「感作されている」ということで、症状があることとは別だという点です。ガイドラインは「パッチテスト陽性を示す症例のうち、全身型金属アレルギーを示す症例は一部のみ」と明記しています5。
金属の主な出口は、便である
ここが、この記事でいちばん使える部分です。
ニッケルについて、学会誌に体内代謝の図が載っています。経口摂取量は1日0.3〜0.6mg。そのうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は糞便として出ていきます5。吸収された分は、尿・汗・乳汁から排泄されます。

金属は、水に溶ける形へ作り変えて尿から出す、という経路だけではありません。大部分は、そもそも吸収されずに通過します。だから通過が滞れば、留まる時間が延びます。
これは、胆汁が重金属を便側へ送り出す経路であるという話と、同じ出口を指しています。そして出口が先で、上流があとという順番が成り立つ理由も、ここにあります。食物繊維の摂取量が目標より10g近く少ないというのは、この通過の話です。
もう一つの歯科金属、アマルガムは2034年に終わる
古い治療では、アマルガムという水銀を含む合金が使われていました。日本皮膚科学会のガイドラインが「歯科金属はパラジウム、金、水銀、錫などを含有することが多い」と書いているのは、これを含みます2。
この材料について、2025年11月に国際的な決定がありました。
水銀に関する水俣条約の第6回締約国会議(COP6、ジュネーブ、2025年11月)で、2034年を世界的な廃止年とすることが合意されました。それ以降、歯科用アマルガムの製造・輸入・輸出は認められなくなります6。
| 内容 | |
|---|---|
| 廃止年 | 2034年。当初案は2030年で、4年延長された |
| 例外 | 「患者の必要性にもとづき、歯科医師が必要と判断した場合」は、廃止後も使用できる |
| 猶予 | 締約国には9年の準備期間 |
| 条約の状況 | 2017年8月発効。2025年9月時点で153の締約国 |
なお、日本では歯科用アマルガムはすでに保険診療で使われていないと報じられています。報道によれば2016年4月に保険適用から除外されました。この点について、厚生労働省の一次資料では確認できていません。
ただし、口の中にある古い詰め物については、話が別です。日本歯科医師会や日本歯科保存学会は、支障なく使われているアマルガムについて、削り取る際の粉塵や、削る熱による水銀の気化を考慮する必要があるという見解を示しています。
この順番は、ガイドラインの推奨とも一致しています。除去は、診断がついてから、歯科医師と相談して決めるものです。自分の判断で外しに行く手順は、どこにも書かれていません。
皮膚科が実際にとっている順番
「銀歯が原因かもしれない」と考えたとき、いきなり歯科へ行くのは、学会が示している手順と逆です。
兵庫県立加古川医療センター皮膚科の報告によれば、まず食事中にも含まれるニッケル・コバルト・クロムのパッチテストが陽性の場合、金属制限食を2ヶ月程度行い、それで軽快しない場合にのみ歯科金属の関連を考慮します5。
理由があります。保険診療でよく使われる金パラジウム合金に含まれるパラジウムは、ニッケルと交差反応が強い。パラジウムのパッチテストが陽性でも、ニッケル制限食のみで軽快する場合があります5。
歯科金属の除去について、ガイドラインの推奨はこうです。「患者がパッチテスト陽性を示した金属が歯科金属中に明らかに含有されている症例では、その歯科金属を除去すると有効な場合がある」——推奨の強さC1、エビデンスレベルV2。
C1は「行ってもよいが、十分な根拠がない」水準です。レベルVは症例報告や専門家の意見にあたります。学会が対応表まで作っている問題ですが、除去の効果は症例報告の水準だ、というのが現在地です。
そのガイドラインは、アレルゲンとなる金属ごとに使用可能な歯科材料を示した対応表を載せていて、そこに「金銀パラジウム合金」がそのまま項目として並んでいます2。
なお2016年4月から、医師の金属アレルギーの診断書があれば、それまで小臼歯に限られていたCAD/CAM冠が大臼歯にも保険適用になりました5。金属を使わない選択肢が保険の中にあります。
金属制限食には、期限と上限がある
金属を食事から減らす方法については、実務的な指導内容が公表されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 水道水 | 流し始めの5分間は使用しない |
| 缶 | 缶詰食品・缶詰飲料を摂取しない |
| 調理器具 | ステンレス製品・メッキ製品を避ける |
| 実施条件 | 必須金属も含まれるため、必ず医師の指導のもとで行う |
| 期限 | 2ヶ月続けて無効なら、速やかに中止する |
2つ、はっきり書かれています。厳格すぎる金属制限食は微量元素欠乏症をきたす可能性があるため避けるべきこと。そして2ヶ月で区切ること5。
ニッケル・コバルト・クロムは、豆類、木の実、穀類、チョコレート、ココア、紅茶、貝類、レバー、胚芽に多く含まれます5。そのまま鉄・亜鉛・銅の供給源でもあります。だから期限が要ります。
これは食品不耐性の欄に該当が出たときと、まったく同じ構造です。減らす対象が、そのまま栄養の供給源になっている。だから全部やめない、期間を決める、1つずつ戻す。
口の中を、今日見る
蓄積の欄にパラジウム・銀・金が並んでいたとき、確かめられることは具体的です。
鏡で口の中を見る。銀色の詰め物やかぶせ物があるか。何本あるか。前から数えて何番目か。
そして、いつ入れたか。入れた歯科医院のカルテに、使った材料名が記録されています。保険診療なら、金銀パラジウム合金である可能性が高い。古い治療でアマルガム(水銀を含む合金)が使われていた時期もあります。
これは思い出す作業ではなく、見れば分かる作業です。入口の表の中で、自分で確認するのがいちばん簡単な項目がここです。
そのうえで、皮膚の症状が続いているなら、順番は皮膚科です。手のひらや足の裏の水疱、繰り返す湿疹、口の中のただれ。金属の入口は9種類それぞれ違うので、口の中だけを見て決める話ではありません。
そして、入ったもののうち9割以上は便から出ていきます。入口を数えたあとに見る場所は、そちらです。
参考文献・参考資料
- JIS T 6106:2011「歯科鋳造用金銀パラジウム合金」日本産業規格 https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/
- 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌 2020;130(4):523-567.(全身型金属アレルギー、付表5「アレルゲン金属と使用可能な歯科金属との対応表」) https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
- YAMAKIN株式会社「保険適用貴金属合金の歯科市場(金パラ編)」歯科材料メーカーによる解説 https://www.yamakin-gold.co.jp/yn/ym145_auagpd/
- 厚生労働省「歯科用貴金属価格の随時改定について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000334422.pdf
- 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173.(図1「ニッケルの体内代謝」、表1「金属とその感作源一覧表」、表2「金属制限食指導表」) https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf
- FDI World Dental Federation「COP6 decision on dental amalgam secures an equity-focused, patient-centred approach」2025年11月7日(ジュネーブ)。世界歯科連盟と国際歯科研究学会による共同声明 https://www.fdiworlddental.org/cop6-decision-dental-amalgam-secures-equity-focused-patient-centred-approach
本記事は規格と学会ガイドラインの整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。金属アレルギーの診断はパッチテストなどにより医療機関で行われるもので、検査結果がその診断に代わることはありません。歯科金属の除去・交換は、診断にもとづいて歯科医師と相談して決められるものです。金属制限食は必須金属の不足を招く可能性があるため、自己判断で長期に行わないでください。特定の製品・治療の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。
SNSでフォロー
最新記事や、ここだけのコンテンツをお届けします。