マイクロプラスチックに、いま現実的にできること
マイクロプラスチックについて、「体内にどれだけ溜まると危ないか」という線を、まだ誰も引けていません。害がないと分かったからではなく、測り方が国際的に揃っていないからです。
米国FDAは2024年7月の更新で、「食品中で検出されているレベルが人の健康にリスクをもたらすことを、現在の科学的根拠は示していない」としています。ただし同じページで、その評価を制限している要因も挙げています。標準化された定義、参照物質、試料の採取・調製手順が欠けていることです1。
つまり「安全だと確かめた」ではなく、「比べられる形で測れていない」という段階にあります。
入口は3つ挙げられている
FDAは曝露経路として、空気、食べもの、そしてパーソナルケア製品の使用による皮膚からの吸収を挙げています1。
ただし3つめについては、成分によって結果が分かれています。日焼け止めの場合、無機の散乱剤は角層の外層より奥へ到達しなかったという報告が大半で、逆に有機の吸収剤は血中に出ることが測定されています。「皮膚から入る」も、物質ごとに分けないと答えが出ません。
食品については、食塩、魚介類、砂糖、ビール、ボトル入り飲料水などでの検出が報告されています。ただしFDAは、これらについて定量値を示していません。研究ごとに分析方法が違い、比較が困難だからです1。
ここが、他の体内蓄積の話と決定的に違うところです。鉛と水銀なら、入口が具体的に分かっています。食品添加物なら、一日摂取許容量が決まっていて、日本人の実際の摂取量も毎年推定されています。
マイクロプラスチックには、そのどちらもありません。
同じプラスチック由来でも、フタル酸エステル類には物質ごとの耐容一日摂取量があり、2025年6月からポジティブリスト制度が完全施行されています。「プラスチック容器」という1つの入口の中に、答えが出ているものと出ていないものが混ざっています。
日本の現状認識
日本学術会議は、提言「マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス」で、現状をこう書いています2。
| 記述 | |
|---|---|
| 可能性として指摘されていること | ナノサイズのプラスチックが細胞膜を通過して、生物組織を傷害する可能性がある |
| 調査の状況 | 吸着・含有された有害物質による生物への毒性影響の調査事例は少ない |
| リスク評価 | 環境および健康リスク評価は全く行われていない |
「危険だと分かっている」でも「安全だと分かっている」でもありません。評価そのものが行われていない、という第三の状態です。
欧州食品安全機関(EFSA)は健康リスク評価を開始していて、結果の公表は2027年末までとされています3。線が引かれるとしても、まだ先です。
入口を全部は閉じられない
ここから先が、実際に手を動かせる部分です。
入口を減らす方向は、いくつかあります。飲料の容器を選ぶ、加熱にプラスチック容器を使わない、パーソナルケア製品の成分表示を見る。どれも意味はあります。
ただし空気が経路に入っている時点で、入る量を自分で完全に管理することはできません。屋内の繊維やほこりからも入ります。減らせても、ゼロにはなりません。

だとすると、実際に体に残る量を決めているのは、入る量だけではありません。入った分をどれだけ処理して外へ出せているか、その差のほうです。
出す側は、実在する仕組みである
「デトックス」という言葉は、いま扱いにくい状態にあります。物質名が書かれていない「毒素」を出すという商品や施術が多く、出たかどうかを誰も確かめられないからです。
ただ、そこで話を止めると、出す側そのものが無かったことになります。実際には、経路ははっきり分かっています。
| 経路 | 担っているもの |
|---|---|
| 尿 | 腎臓。水に溶ける形になったものを濾し出す |
| 便 | 肝臓がつくる胆汁。尿からは出せない物質を便側へ送り出す |
| 変換 | 肝臓の第I相・第II相。脂に溶けやすい物質を、水に溶ける形へ変える |
肝臓の主な働きは八つ以上あり、そのうちの一つが「胆汁をつくる」ことです。その役割は、尿からは出せない物質を便の側へ送り出すこと。つまり出口は尿だけではありません。
そしてこの二段階の変換には、注意点があります。第一相でできる中間産物は、元の物質より反応しやすく、場合によっては毒性が強くなります。第二相が追いつかなければ、その中間産物のほうが問題を起こしうる。「解毒力を高める」という言い方が分かりにくいのは、この構造のためです。
測れないものと、測れるもの
この「測れなさ」は、検査の側にもそのまま現れています。
RESONA-LABの結果報告書は、体内蓄積の欄を3つに分けています。重金属は9種の項目名が並び、添加物はE番号で並ぶ。そしてプラスチック蓄積の欄には、「準備中・・・」とだけ書かれています4。
ここは正直な表示です。金属には、入口ごとの公的な基準や摂取量調査があります。添加物には一日摂取許容量があり、日本人の摂取量も毎年推定されています。マイクロプラスチックには、そのどちらもありません。FDAが定義も参照物質も採取手順も揃っていないと書いているとおりです。
つまり「まだ測れない」という状態が、そのまま欄に書かれているということです。埋まっている欄と、埋まっていない欄の違いは、体の側ではなく、測る技術の側にあります。
マイクロプラスチックは、いまのところ入る量も、体内の量も、比べられる形では測れません。線も引かれていません。
その状態で自分に対してできることは、2つに分かれます。
入口の側。容器、加熱、パーソナルケア製品。減らせますが、空気が入っている以上、閉じきれません。
出口の側。尿と便という経路は実在し、肝臓・腎臓・腸が関わっています。便として出す経路は、食物繊維の量に影響されます。そしてその処理に必要な栄養素が足りているかは、確かめられる項目です。
ほかの入口にどこまで数字があるかは、入ってくるものと、出す力で比べられます。
入る量が測れないときほど、出す側が働いているかどうかが効いてきます。入口を完全には閉じられないからこそ、そちらが残りの量を決めます。
参考文献・参考資料
- U.S. Food and Drug Administration. Microplastics and Nanoplastics in Foods.(最終更新 2024年7月24日) https://www.fda.gov/food/environmental-contaminants-food/microplastics-and-nanoplastics-foods
- 日本学術会議 提言「マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス」 https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t288-1-abstract.html 提言本文(PDF)
- 欧州食品安全機関(EFSA)はマイクロプラスチックの健康リスク評価を開始しており、結果の公表は2027年末までとされています。
- RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans
本記事は公的機関・学術団体の公開資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・検査・食事法の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。マイクロプラスチックの健康影響については評価が進行中であり、記載の内容は今後変わる可能性があります。
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