食品添加物が心配なとき、何を見れば位置が分かるか
日本では、添加物ごとに一日摂取許容量(ADI)が決まっていて、実際に日本人がどれだけ摂っているかも毎年調べられています。その結果は公開されています。
「避けたほうがいい」かどうかを決める前に、自分が実際にどのあたりにいるかを見られる、ということです。推測で避ける必要はありません。
ADIは、100で割って作られている
同じ考え方で測られているものが、ほかにもあります。残留農薬は対ADI比で最大2.954%、カドミウムは耐容量に対して平均35%・95パーセンタイルで67%でした。並べると、距離が違います。
日本では、添加物の安全性評価を内閣府の食品安全委員会が行います。動物を用いた毒性試験の結果をもとに、一日摂取許容量(ADI)が添加物ごとに設定されます1。
ADIの作り方は、意外に単純です。

そのうえで厚生労働省が、薬事・食品衛生審議会で審議し、食品ごとの使用量と使用の基準を設定します1。ADIは目標ではなく、超えないようにする側の線です。
実際に、どれだけ摂っているか
基準を決めるだけでは、実際にどれだけ摂っているかは分かりません。そこで、摂取量の調査が継続して行われています。
方法はマーケットバスケット方式と呼ばれます。スーパー等で200〜300種類の食品を実際に購入し、食品群ごとに混ぜて分析し、それに食品摂取量の調査データを掛け合わせて一日の摂取量を推定します1。表示ではなく、買ってきた食品の実測から積み上げる形です。

17.2%という数字の受け取り方には、少し注意がいります。ADI自体が無毒性量を100で割った値なので、ADIの17.2%は、動物実験で害の出なかった量の約580分の1にあたります。
「複数を同時に摂ったら」はどうなのか
ここは、当然出てくる問いです。ADIは物質ごとに設定されます。では、いくつも同時に摂ったときはどうなるのか。
この点も検討されています。食品安全委員会の2006年度の調査報告は、複数の添加物を同時に摂ったときの影響について、実際に問題となる可能性は極めて低く、理論的な可能性の推定にとどまるとしたうえで、こう結論しています2。
個々の食品添加物の評価を十分に行うことで、食品添加物の複合影響についても実質的な安全性を十分確保することが可能
理由として挙げられているのは、医薬品との違いです。医薬品は体に作用を及ぼすことを目的としているため相互作用が問題になりますが、添加物はそもそも体に作用させることを目的としておらず、かつ使用基準の範囲内でしか使われないため、複合摂取時の相互作用は現れにくいとされています2。
ただし、相互作用の実例はあります。清涼飲料水で、アスコルビン酸と安息香酸ナトリウムが反応してベンゼンが生じた例が知られています。現在の摂取レベルでのリスクは非常に低いと評価されていますが、「何も起きない」ではなく「調べたうえで、問題になる水準ではないと判断されている」ということです2。
「添加物を減らす」が、実際に意味していること
添加物を減らそうとすると、実際に減るのは加工食品の割合です。そして加工食品の割合が下がると、添加物以外のものも同時に動きます。食塩、脂質、糖、食物繊維。
体調に変化があったとして、それが添加物によるものなのか、食塩や食物繊維によるものなのかは、この方法では分けられません。一度に一つだけ変えるという原則が、ここでも効いてきます。
つまり「添加物を避ける」という言い方は、実際には食事全体の構成を変えることを指しています。目的が食事の質なら、そちらを直接見るほうが早く進みます。
「E621」は、EUの番号である
検査結果や輸入食品の表示に、E621、E102、E250といった記号が並ぶことがあります。これはEUの食品添加物番号です。
EU規則1333/2008に基づき、欧州食品安全機関(EFSA)の評価を経て承認された添加物に付されます4。Eは「Europe」です。日本の表示制度には存在しない記号なので、そのままでは意味が取れません。
最初の数字が、用途を表しています。
| 範囲 | 用途 | 例 |
|---|---|---|
| E100番台 | 着色料 | E102(黄色4号)、E123(赤色2号)、E124(赤色102号)、E127(赤色3号) |
| E200番台 | 保存料・酸化防止剤・発色剤 | E220(二酸化硫黄)、E249(亜硝酸カリウム)、E250(亜硝酸ナトリウム)、E251(硝酸ナトリウム) |
| E500番台 | pH調整剤・固結防止剤 | E535(フェロシアン化ナトリウム) |
| E600番台 | 調味料・うま味 | E621(グルタミン酸ナトリウム)、E627(グアニル酸ナトリウム)、E640(グリシン) |
日本語の表示に直すと、見え方が変わります。E621は「調味料(アミノ酸等)」、E102は「着色料(黄4)」、E250は「発色剤(亜硝酸Na)」。日本の食品表示で毎日見ている名前です。
なお、日本で実際に使用基準が動いた例もあります。ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム等)は、小児の上位層で上限を超えていたことが調査で分かり、2018年に菓子・生菓子・パンへ1kgあたり0.1g以下の基準が新設されました。
つまりE番号が並んでいても、特別な物質が並んでいるわけではありません。普段見ている表示を、別の記号で書いたものです。そして前の節で見たとおり、日本ではこれらの摂取量が毎年推定されていて、一日摂取許容量に対する割合が最も高かったもので17.2%でした。
検査結果に添加物の名前が出た場合
まず、これは中毒の診断ではありません。そして、体内の添加物の量を測る一般的な臨床検査は存在しません。鉛や水銀のように、入口を1つに絞れるという構造にもなっていません。
用途ごとの数字もあります。甘味料7種の対ADI比は0.002〜0.25%でした。
表示の読み方には、決まった手順があります。原材料名欄の「/」の右側が添加物で、重量の多い順に並んでいます。ただし一括名で書かれるものの中身と、加工助剤・キャリーオーバーは表示されません。
できるのは、何がどれだけ入っているかを見ることです。加工食品を食べる頻度、飲料の種類、間食の内容。記録すれば分かることであって、検査を追加しなくても手がつけられます。
そして、結果に添えられた症状の一覧を見て、当てはまると感じたときは、その症状がそもそもどれくらいありふれているかを先に確かめてください。
調べられていることと、いないこと
この記事で確かめたのは、次の3つです。
| 状況 | |
|---|---|
| 個別の安全性 | 物質ごとにADIが設定されている(無毒性量÷100) |
| 実際の摂取量 | 継続して推定されている。最も高いものでADIの17.2% |
| 複合影響 | 検討され、個別評価で実質的な安全性は確保できるとされている |
| 体内の量を測る検査 | 一般の臨床検査には存在しない |
避けるかどうかは、最終的にはその人が決めることです。ただ、「調べられていない」と「調べたうえで問題になる水準ではないとされている」は別のものです。この区別は、健康情報を読むときにくり返し出てきます。
参考文献・参考資料
- 厚生労働省「食品添加物 よくある質問(消費者向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
- 内閣府食品安全委員会「添加物に関する質問に川西徹委員がお答えします」 https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/tenkabutsu_anzen.html 引用元:食品安全委員会「平成18年度食品安全確保総合調査 食品添加物の複合影響に関する情報収集調査 報告書」平成19年3月
- 河﨑裕美, 高木繁行, 大西有希子ほか. マーケットバスケット方式による食品添加物の一日摂取量の推定(2006-2008年度). 日本食品化学学会誌. 2011;18(3):150-162. doi:10.18891/jjfcs.18.3_150 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfcs/18/3/18_KJ00007729478/_article/-char/ja/
- Regulation (EC) No 1333/2008 on food additives(EU 食品添加物規則)。EUで評価・承認された添加物に付される番号体系 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2008/1333/oj/eng
本記事は日本の制度と調査結果の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品の推奨や否定を目的とするものでもありません。食物アレルギーや特定の成分で症状が出る場合は、この記事の一般的な整理は当てはまりません。
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