主食から入るカドミウムと、どう付き合うか
日本人が許容量にいちばん近づいている物質は、主食から入ってきます。
カドミウムの耐容週間摂取量は体重1kgあたり7µg。日本人の実際の摂取量は、平均でその35%、95パーセンタイルで67%です1。20人に1人は、線の3分の2まで来ています。
そして摂取量の7割以上が、米・小麦・大豆の3品目から来ています1。避けにくい入口です。
線がどこにあるか
カドミウムについては、日本に耐容週間摂取量(TWI)が設定されています。食品安全委員会が2008年7月3日に、体重1kgあたり週7µgと定めました1。
週単位で設定されているのは、体内に蓄積して長い時間残る性質があるためです。食品添加物のように1日単位で見る物質とは、扱い方が違います。
実際の摂取量は、どのあたりか
農林水産省は、平成21〜26年度の調査結果として、日本人の食品からのカドミウム摂取量を1日あたり体重1kgにつき0.32µgとしています。週にすると2.24µgです1。

ここで効いてくるのが、平均だけを見ないことです。
平均は35%ですが、95パーセンタイルでは67%になります1。摂取量の多いほうから20人に1人は、耐容量の3分の2の位置にいるということです。
平均に一致する人が目の前にどれだけいるかは、別の話でした。この物質では、その差が実際の距離として表れています。
他の物質と比べると
「体に入ってくるもの」とひとまとめにすると、この差が見えなくなります。
| 物質 | 上限に対する割合 |
|---|---|
| カドミウム | 平均35%/95パーセンタイル67% |
| 残留農薬(48農薬等) | 0.000〜2.954% |
| 食品添加物 | 調査で最も高かったものでADIの17.2% |
| PFAS | 2024年にTDI設定。実際の摂取量データはこれから |
| マイクロプラスチック | 上限そのものがない |
カドミウムだけ、桁が違います。不安の総量ではなく、実際の距離で並べると、手を打つ場所の優先順位が変わります。
入口を選べない
ここが、この物質の難しいところです。
農林水産省は、日本人のカドミウム摂取量について米・小麦・大豆の3品目から7割以上と説明しています1。
特定の嗜好品や加工食品ではありません。主食です。
カドミウムは日本の土壌に由来するもので、火山国であることや鉱山活動の歴史が背景にあります。「この商品を避ければいい」という構造になっていません。
国の側では、米のカドミウム濃度に基準値が設けられ、産地での対策も行われています。ただし個人の選択で減らせる幅は、他の物質より狭いことになります。
ただし、主食のほかにもう1つ、この金属には入口があります。たばこです。
紙巻たばこ1本に含まれるカドミウムは1.8〜2.8µgで、うち10〜20%が主流煙に吸入されます。20本で2〜4µg。食事から入る量(体重60kgで1日約19µg)の1〜2割にあたります。皮膚科の金属制限食の指導表でも、ニッケルを多く含むものの欄に「タバコ」が挙げられています2。
そして経路が違います。吸入で入ったものは、肝臓での作り変えを経由せずに全身へ回ります。同じµgでも、扱われ方が同じではありません。
つまり入口は2つあって、片方は選べません。もう片方は選べます。米・小麦・大豆をやめる選択肢は現実的ではなく、栄養面でも勧められません。減らせる側が、そちらではないということです。
減るのを待てる時間ではない
もう1つ、この金属には時間の問題があります。
食品安全委員会の評価書は、カドミウムは近位尿細管で再吸収されて腎皮質に蓄積し、腎皮質での生物学的半減期は20〜50年と推定されるとしています。体内負荷量の1/3が腎皮質、1/4が肝臓や筋肉に蓄積し、脳・脂肪組織・骨への蓄積は非常に少ないとも書かれています。
水銀なら、体内の量が半分になるまで約2ヶ月です。この金属は、その時間では動きません。効くのは、これから入る量のほうだけです。
入口が選べないときに、残るもの
ここまでを並べると、この物質は次の条件を満たしています。
上限の数字がある。実際の摂取量も測られている。そして、線までの距離が他より近い。さらに、入口が主食なので選べない。
この状態で体に残る量を決めているのは、入る量と出る量の差のほうです。
体の出口は尿と便の2つあります。医学の教科書は、胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない、潜在的に有害な脂溶性物質の主要排泄経路」と書いていて、そこへ出されるものとして重金属を名指しで挙げています。
そしてその前段にある変換は、第I相と第II相の二段階で、第II相ではグルクロン酸や硫酸、アミノ酸をくっつけます。物質名まで分かっている反応です。
入口を減らせないぶん、出口が働いているかどうかが効いてきます。そして胆汁を介した経路の終点は便で、その通過に関わる食物繊維は、日本人がすでに目標量に届いていない項目でした。
数えるべきは、不安ではなく距離
「体に悪いものが入ってくる」という言い方は、どの物質にも同じ重さを与えてしまいます。
実際には、上限の数字があるものとないもの、実測されているものとされていないもの、そして線まで遠いものと近いものがあります。
日本人がいちばん近づいているのは、毎日食べている主食から入るものでした。避ける選択肢が乏しいからこそ、出す側の話になります。
参考文献・参考資料
- 農林水産省「我が国における食品からのカドミウムの摂取量」(平成30年10月1日更新) https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/jitai_sesyu/02_int.html 耐容週間摂取量は内閣府食品安全委員会「食品から摂取されるカドミウムの健康影響評価」(2008年7月3日) 評価書(PDF)
- 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf
本記事は公的機関の調査結果の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・産地・製品の優劣を示すものでも、選択を勧めるものでもありません。記載の数値は集団の推計であり、個人の摂取量がそのまま当てはまるわけではありません。食品中のカドミウムには基準値が設けられ、流通品はその範囲で管理されています。
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