「50%減る」という数字を、どう受け取るか
「リスクが50%減る」と書かれていても、何が半分になったのかは書かれていません。100人に2人が1人になったのかもしれない。同じ結果の、別の読み方を整理します。
この一文は、大きな効果があるように読めます。半分になると書いてあるのですから当然です。ただ、何が半分になったのかは書かれていません。100人に2人が1人になったのか、1万人に2人が1人になったのか。どちらも「50%減」です。
同じ研究結果を別の言い方にしただけで、人の判断は変わります。それは検証されていて、実際に社会を動かしてしまった例も残っています。
同じ結果を、三通りに書く
ひとつの結果は、少なくとも三通りの言い方で書けます。

「25%減」「0.1ポイント減」「1,000人に1人」。どれも同じ1人分の変化を指しています。広告や見出しで選ばれやすいのは最初の言い方です。いちばん大きく見えるからです。
この例は架空のものではありません。ギゲレンツァーらは、乳がん検診について「マンモグラフィ検診は乳がんで死亡するリスクを25%下げる」という表現が、実際には「1,000人のうち1人が乳がんで死亡せずにすむ」ことを意味すると指摘しています1。
表現の違いは、受け手の判断を変える
「見え方が違うだけで、分かる人には同じでしょう」。これも検証されています。
世界中の研究を集めて評価している国際組織コクランのレビューが、この点を調べています。同じ結果を違う書き方で見せた研究35件、83の比較を集めた分析です。理解度は、相対的な書き方でも絶対的な書き方でも変わりませんでした。変わったのは受け取り方で、相対的な書き方のほうが効果が大きいと感じられ、説得的だと評価されました2。
理解しているかどうかとは別に、印象と説得力が動きます。表現の選択は中立ではありません。
1995年、イギリスで起きたこと
この構造が現実に何を引き起こしうるかを示した出来事があります。
1995年10月、英国の医薬品安全性委員会が、ある種の経口避妊薬について警告を出しました。対象は「第三世代」と呼ばれる、当時より新しく開発された種類のものです。脚や肺に血の塊ができるリスクが2倍、すなわち100%高まるという内容でした。この情報は19万人の一般医、薬剤師、公衆衛生担当者へ文書で伝えられ、報道機関にも緊急発表されています1。
では、その100%とは何だったのか。警告の根拠となった研究が示していたのは、従来の第二世代の薬を服用した女性7,000人のうちおよそ1人に血栓が生じ、第三世代ではそれが2人になった、ということでした。絶対的な増加は7,000人に1人。相対的な増加は、確かに100%です1。
報道を受けて多くの女性が服用を中止しました。ギゲレンツァーらによれば、その翌年、イングランドとウェールズで中絶がおよそ13,000件増えたと推計されています。増えた中絶1件につき出生も1件増え、16歳未満の妊娠は約800件増加。中絶にかかる国民保健サービスの費用増は約4,600万ポンドと見積もられました1。
そして最も皮肉な点ですが、妊娠と中絶自体が血栓のリスクを高め、そのリスクは第三世代の薬によるものを上回ります1。血栓を避けるための警告が、より大きな血栓リスクを生む行動を引き起こした可能性があります。
この出来事は、統計の表現が正確でありながら不透明でありうることを示しています。「2倍」は嘘ではありません。それでも、7,000人に1人が2人になる、と伝えられていれば、多くの女性は服用をやめなかったでしょう。
「元がどれくらいか」で意味が変わる
相対的な数字が誤解を生みやすいのは、元の頻度(ベースライン)が示されないときです。
もともと10人に1人が経験することが20人に1人になれば、50%減という表現は実感に近いものになります。10人のうち1人分の変化が実際に起きているからです。では10万人に2人が10万人に1人になった場合はどうか。これもやはり50%減ですが、10万人が対策をとって1人分が減る計算になります。
どちらが意味のある変化かは、状況によって違います。まれだが重い病気であれば、10万人に1人の差にも価値があります。判断するために必要なのは、相対的な割合と元の頻度の両方であって、片方だけでは決められません。
実際に、商品に書かれた「体にいい」の根拠を辿るときも、最初に探すのはこの元の頻度になります。
健診の場面でも同じです。LDLコレステロールの管理目標値が一律でない理由は、まさにここにあります。
ここから、数字を見たときの実務的な手順が出てきます。「何%」という表現に出会ったら、元の頻度を探す。書かれていなければ、その数字だけでは効果の大きさは判断できない、と保留してかまいません。
NNTという伝え方
絶対リスク減少の逆数が治療必要数(NNT)です。先の例なら、1,000人あたり1人の減少ですからNNTは1,000。「1,000人が受けて、そのうち1人が結果を変えられる」という言い方になります。
この表現は、恩恵を受けるのが全員ではないことをはっきりさせます。裏を返せば、999人にとっては結果が変わらないことも同時に伝えています。効果を小さく見せる表現だと受け取られることもありますが、実際に起きることを最もそのまま述べているのはこの形です。
先のコクラン・レビューは、NNTが理解のしやすさでは相対リスク減少に劣るという結果も報告しています2。正確さと分かりやすさは自動的には両立しません。だからこそ、複数の表現を並べて見ることに意味があります。
絶対リスクだけ書けばよい、とも言えない
どの形式で伝えるべきかについて、決着した答えはありません。絶対リスクを併記すべきだという主張は広く支持されていますが、では常に絶対リスクだけを示せばよいかというと、そう単純ではありません。まれな出来事では絶対的な差が非常に小さくなり、意味のある効果まで軽視される可能性があります。
また、平均的な絶対リスク減少は、リスクの高い人と低い人で大きく異なります。もともとリスクが高い人にとっては同じ相対的な減少がより大きな絶対的利益になり、リスクが低い人にとってはわずかになります。集団の平均値を個人に当てはめる際の限界は、ここにも現れます。
研究デザインの読み方はエビデンスという言葉を整理した記事にまとめました。そして、どこまでのリスクを受け入れるかは統計では決まりません。1,000人に1人の違いを重く見るかどうかは、その人が何を大切にしているかによります。ここは誰かに決めてもらえる部分ではありません。
数字の前で、立ち止まれる場所
同じことが、「体に入ってくるもの」の数字にも当てはまります。
「農薬が検出された」「カドミウムが検出された」は、それだけでは大きさが分かりません。分母が要ります。公的な調査は、そこを比で出しています。
| 物質 | 上限に対する割合 |
|---|---|
| 残留農薬(48農薬等) | 一日摂取許容量の0.000〜2.954% |
| 食品添加物 | 最も高いもので17.2% |
| カドミウム | 耐容週間摂取量の平均35%、95パーセンタイルで67% |
| アルミニウム(小児1-6歳) | 暫定耐容週間摂取量の平均43%、95パーセンタイル以上で100%超 |
並べると、「検出された」という同じ言葉の下に、桁の違う距離があることが見えます。上限まで0.02%の物質と、67%の物質を、同じ強さで心配する理由はありません。
同じ食品について、国によって結論が分かれた例もあります。2004年、英国はヒジキを食べないよう勧告し、日本は摂取量から計算して「極端に多く摂らなければリスクは高まらない」としました。分けたのは、量を計算に入れたかどうかでした。
そして分母そのものが存在しない物質もあります。そこでは比が作れないので、遠いとも近いとも言えません。
効果を示す数字に出会ったとき、その場で確かめられることがいくつかあります。
まず、その数字が出た研究が「関連を見たのか、原因を確かめたのか」。ここでも意味は変わります。この違いは別の記事で扱いました。
厚生労働省eJIMは「情報を見極めるための10か条」で「数字のトリックに注意しよう」「出来事の『分母』を意識しよう」を挙げています3。分母を意識するとは、「何人中何人か」を探すことです。効果を示す数字に出会ったとき、確かめられることは多くありません。それでも次の三つは、たいていの記事から探せます。
その数字は割合か、実数か。元の頻度はどれくらいか。そして、何人が受けたとき何人分の違いが生まれるのか。この三つが埋まると、同じ「50%」がまったく違う大きさに見えてきます。埋まらないときは、判断を保留してかまいません。情報が足りないのは読み手の理解力の問題ではなく、伝え方の問題です。
1995年の警告は、正しい数字によって引き起こされました。正確であることと、伝わることは別のものでした。
確かめ方は1つです。「◯%減る」という数字を見たら、元が何人中何人だったかを探します。
書かれていれば、実際に減る人数が出ます。1,000人に4人が3人なら、減るのは1人です。書かれていなければ、その時点で判断材料が足りていません。書かれていないことに気づけるかどうかが、この記事で持ち帰れるところです。
参考文献・参考資料
- Gigerenzer G, Gaissmaier W, Kurz-Milcke E, Schwartz LM, Woloshin S. Helping Doctors and Patients Make Sense of Health Statistics. Psychological Science in the Public Interest. 2007;8(2):53-96. doi:10.1111/j.1539-6053.2008.00033.x https://journals.sagepub.com/doi/10.1111/j.1539-6053.2008.00033.x
- Akl EA, Oxman AD, Herrin J, et al. Using alternative statistical formats for presenting risks and risk reductions. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2011;(3):CD006776. doi:10.1002/14651858.CD006776.pub2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21412897/
- 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』(eJIM)「情報を見極めるための10か条」https://www.ejim.mhlw.go.jp/public/hint/index.html
本記事は統計表現の読み方を整理したものであり、特定の医薬品・検診・治療の推奨や中止を促すものではありません。個別の診断・治療に代わるものでもありません。服薬や検診について、この記事を理由に自己判断で変更しないでください。
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